ESG対談

時代をリードするサステナブルな
ものづくりの実践で、
社会に広く貢献していく

写真

佐藤代表取締役社長と宮本取締役、2022年度から社外取締役に就任された𠮷田取締役の3名が、シチズングループのサステナブル経営やESGの取り組みについて語り合いました。

  • 代表取締役社長 佐藤 敏彦(写真左)
  • 取締役 宮本 佳明(写真右)
  • 社外取締役 𠮷田 勝彦(写真中央)

サステナビリティの素養は既にある、自信を持って社会責任を果たして欲しい

佐藤社長(以下、佐藤):近年では多くの企業が社会貢献やESG(環境・社会・ガバナンス)に注力する機運が高まっています。当社グループにおいても、サステナブル経営を事業の中心に据え、本腰を入れて取り組まないとグループの企業理念である「市民に愛され市民に貢献する」の体現は困難との考えに立ち、長いグループの歴史の中で今回初めて長期ビジョンを策定し、将来の環境変化を見据え、ありたい姿の実現に向けて取り組み始めています。

𠮷田社外取締役(以下、𠮷田):まず基本的な私の考えからお話させていただくと、シチズンは100年以上続く企業であり、長寿企業は世の中に貢献する理念や製品、技術があるからこそ社会に認められ存続してきたのは間違いないことであり、ESGに関する素養は既に十分持っている。サステナブルなど新しいワードが次々と登場していますが何ら臆することなく、自分たちが業界をリードしていく強い気概を持って推進することが大事だと考えています。

佐藤:力強い言葉をいただき、ありがとうございます。長期ビジョンで打ち出した「豊かな未来(とき)をつなぐ、Crafting a new tomorrow」というメッセージには、時計を中心とするものづくりの企業として、長く愛される製品を通じて社会に貢献していくという思いが込められています。そして「サステナブルファクトリー」というコンセプトのもと、製品・サービスの製造プロセスにも配慮したものづくりを実践しています。

宮本取締役(以下、宮本):長期ビジョンからバックキャストで再設定したマテリアリティについても、従来の品質や人権に関するリスク管理といった、いわば守備的な施策は継続しながら、経営企画部とCSR・環境部門が一体となって、事業の重要性と社会への影響度という二軸で事業課題を捉え、気候変動への対応や循環型社会への貢献といった社会に対する影響度の大きい分野に特に注力することで、事業の成長や企業価値の向上を加速させたいと考えています。

𠮷田:企業活動を推進する上で「社外に対して説得力があること、社内に対して納得感があること」はとても大事で、そういう意味で「サステナブルファクトリー」は、ものづくり全般をサステナブルにしていこうというシチズングループの熱意がストレートに伝わり、かつ長きに渡って取り組むべき普遍性を持つ、とても良いメッセージだと思います。マテリアリティについてもステークホルダーが納得できるように構成されており、説得力もある印象を持ちました。

画像

先進技術を活かした施策で、環境負荷軽減に寄与することはシチズンの使命

佐藤:具体的に製品を通じた活動でご説明すると、例えば、日常のわずかな光でも腕時計を駆動できる「エコ・ドライブ」は環境負荷軽減に寄与する独自技術の最たるもので、1970年代のオイルショックを機に太陽光にいち早く着目し、世界初のアナログ式光発電時計が1976年に誕生するなど、半世紀近い歴史を有する技術です。地球環境保護に関心が高まる中、さらなる進化に向けて、より環境に配慮した部品選定も含め、設計段階から見直す取り組みを今年度新たに始めようとしています。また、シチズンマシナリーが展開する金属の切削工程で生じる金属片を微細なチップ状にしてリサイクルを容易にする低周波振動切削技術も独自技術であり、実装した加工装置は全世界で5000台を超える販売実績があります。シチズングループはマーケティングに課題があるというか、技術者自身も価値に気づいておらず、社内外の認知度が低い印象があります。

画像

𠮷田:社会のニーズが十分でなくても、世の中のためになるものづくりを提案し続けてきた中で、ようやく社会のニーズが追いつき、消費者の意識も高まっている状況ですね。シチズングループには、まだまだそのような製品が多いかもしれません。そうした製品や技術を消費者や企業が取り入れることで腕時計用電池の廃棄も減るし、装置を導入した企業の環境負荷低減に大いに貢献します。積極的にアピールして製品や技術の普及を図ることはシチズングループの使命というか義務だと自覚して、気候変動問題の解決や循環型社会の実現に積極的に関与することを期待しています。

宮本:従来はサステナブルファクトリーから生み出される製品がサステナブルプロダクツであると定義していましたが、環境負荷低減やマテリアリティへの貢献度などさまざまな要素を点数化して、一定の基準に達した製品を「サステナブルプロダクツ」とすることで、実態を伴ったアピールで競争力強化を図るとともに、サステナブルプロダクツの売上比率に数値目標を定めるなどサステナブル経営と事業戦略が一致するような施策を時計事業先行で進めています。

𠮷田:エコ・ドライブにしても製品登場から40年以上が過ぎ、ひと時代を終えた技術と社内では捉えているかもしれませんが、そんなことはありません。今また新たに大きな波が来ています。本当に良いものは一過性のブームで終わることなく、時代と共に再評価され、長く売れ続けていきます。また、たとえ高いコストを要しても環境負荷低減は取り組むべき企業課題であり、シチズングループの省エネ化や省力化技術は世の中に広く貢献できる、ビジネスチャンスを秘めています。自分たちの製品や技術の価値を適正に評価して、しっかりアピールしていくことが大事だと思います。

従業員や社会に選ばれる会社でなければ、多様な人財は育たない

佐藤:アピールといえば新入社員の歓迎メッセージなどで「会社の未来の価値を作っていくのはここにいる皆さんですよ、人が財産の人財です」と事あるごとに伝えています。また中堅社員との座談会では「社会に価値を提供するのが事業の目的であり、製品を通じて得られた対価もステークホルダーに還元していく、それがシチズンの事業」であると繰り返し伝えるようにしています。サステナブル経営の根幹にあるのは「人」ですから。 私自身、新入社員の時に聞いたトップのメッセージって意外と記憶に残っているので、私の発言も心に残る人がいて会社の将来を担うと確信しています。

𠮷田:会社の将来を担う多様な人財が育つためには、活躍できる環境作りと機会を提供することが大事。自由に意見を言える心理的安全性が確保された環境のもと、自分がこの会社を成長させて、会社も自分を成長させてくれるという、win-winの関係が必要であり、トップ自ら社員に向けて言葉を尽くして発信していくことは、とても大事だと思います。

画像

宮本:最近シチズン時計の従業員を対象に実施したエンゲージメント調査のギャップ分析では、全体の平均スコアにおいてベンチマークとする同規模企業群とのギャップがゼロという調査結果を得ました。私たちの事業展開に従業員の一定の評価を得ているということで、ひとまず安堵しました。今後はマイナス評価の改善に努めるとともに、事業戦略と人事戦略を連動させて個人の成長と企業の成長や価値向上につなげるなど、従業員や労働市場から選ばれる会社を目指したいと考えています。

𠮷田:事業運営と従業員の意識との間に乖離がないのは、例えば環境負荷低減に関する大胆な施策も社内の支持を得て推進できることであり、とても良いことだと思います。なお、コロナ禍を機に多様な働き方を実現し、各自が好きな働き方を実践することで、仕事のパフォーマンスが上がり、生産性も大きく向上することが期待されます。価値観の多様化といいますが、今の若い人はタイムパフォーマンスを重要視する傾向があるなど、多様な働き方を認めない限り多様な人が入ってきません。女性比率の向上も合わせて、経営幹部が柔軟な発想で捉える必要があります。

対話やビジョンの共有でサプライチェーン全体のリスクを改善

宮本:シチズングループの製品や技術は全世界に及ぶことから、外部のアドバイスなども受けながら、グローバルスタンダードな形でシチズングループの人権方針などを伝え、持続可能な調達を推進しています。 サプライヤーホットラインの設置をはじめ、実態調査のアンケートについてもWeb経由で自動集計できる仕組みを整えるなど事業会社への負担をかけることなくリスク把握に努め、サプライチェーン全体でガバナンス強化 に努めています。

佐藤:環境対策に向けた開発を含め、他社との協業が増える中で、サプライヤーとビジョンを共有し、人権や調達のリスク把握や改善を図ります。また、どういう製品が世の中に求められているのか、そのためにはシチズンはどんな技術を提供できるのか、不足している技術は何か、積極的にマーケティングを行うことも社内に伝えています。

𠮷田:サプライヤーとのビジョンの共有は非常に大切なことですね。なお、日頃取引のない企業についても情報収集に努めるなど、業界動向を含めて世の中を広く見ておくことはとても重要です。部品調達に関連して日頃から代替品はどこから入手できるのか、自分たちの技術や製品がどんなお客さまに貢献できるのかなど、世の中の動向も把握しておくことで、いざという時の事業継続が可能となるでしょう。

シチズングループの未来に向けて、第三者としての役割を果たしていく

𠮷田:ESGのパフォーマンスやリスクがスコア化される現在において、このスコアをしっかりと上げてグローバルに開示していくことはとても重要です。スコアは全業種に共通であり、他社との比較で著しい遅れは企業価値を棄損し兼ねない一方で、自社製品や技術の提供を通じて他社のスコアを上げる一助となるなど、ビジネスチャンスにもなります。情報開示を積極的に行うことで、ステークホルダーにシチズンを理解してもらう場を作ることが大事であり、率先して対話の機会を設けることも今後はより重要と考えます。私は社外取締役として時には苦言を呈しつつ、シチズングループが更に存在感のある企業になるよう、自身の役割を果たしていきたいと考えています。

佐藤:シチズングループの事業展開において、外部機関からのスコアなどに加えて、第三者の視点がしっかり入っていることが重要であり、𠮷田取締役には今後も引き続き、忌憚のない意見をいただけることを願っています。ご指摘いただいた通り、人財の多様化やステークホルダーと対話する機会を増やし、大勢の意見を事業に反映し積極的にアピールしていくことで、社会に貢献し、従業員に とっても豊かな未来(とき)をつなぐことができる会社にしたいと考えています。