水リスクと機会への対応

シチズングループでは、国内外の生産拠点において、高効率設備導入や水循環利用の推進による取水量の削減および、厳しい排水管理による工場排水のクリーン化など、持続可能な水資源の利用を推進しています。また、拠点ごとに水使用や排水管理に関する目標を設定し、水リスクの低減につながる取り組みを進めています。

水リスクの高い地域での操業

水関連のリスクと機会は、気候変動と同様に全社的なリスクマネジメントシステムに統合して特定しているほか、サステナビリティ委員会の審議事項にも含まれており、ISO14001の枠組みでリスク特定を図っています。
3〜5年先の水関連のリスクと機会については、WRI Aqueductを利用して年1回定期的に見直しています。評価の結果、シチズングループにおいてタイにある2工場と中国の1工場が特に水リスクの高い地域に生産拠点があることが分かりました。流域における淡水量不足リスクの指標である水ストレスについては、タイの4工場、中国の1工場が水ストレスが高い地域に立地し、これらの地域からの取水量はグループ全体の10.4%であることがわかりました。地域の生態系に影響を与える排水の水質に関する指標にも注目しており、シチズングループ環境目標2030には排水水質向上の目標を盛り込み、排水処理施設更新などグループ各社で水質向上に関する取り組みを推進しています。今後は生産拠点における水リスクの評価を更に充実させ、拠点ごとのリスクに応じた目標設定も検討していきます。
また、異常気象による洪水や水不足の発生などの水関連のリスクは直接操業および部品調達等のバリューチェーンに大きく影響し、収益性低下をもたらす要因となりますが、シチズングループでは洪水などによる工場操業や調達・物流の停止、渇水など水不足、給水制限による工場操業停止、工場地下水の汚染による対策コスト発生を水関連リスクとして特定しています。発生の可能性は高くはありませんが、これらリスクの影響を最小限にとどめる活動を進めるとともに、地域ごとに詳細な調査を行い潜在的なリスクをとらえ、きめ細かに対応していきます。
水リスクの情報は、地域の工業団地の管理者や行政機関と緊密なコミュニケーションを通じて常に最新情報に更新しています。また今後は新規事業の展開や新工場の建設時における水関連のリスク評価を強化していく予定です。

WRI Aqueductによる評価

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  全体的な水リスク 水ストレス 河川洪水リスク 沿岸洪水リスク
Extremely high タイ2拠点、中国1拠点 タイ4拠点、中国1拠点 なし 中国4拠点、ベトナム1拠点
High タイ2拠点、フィリピン2拠点、ベトナム1拠点 なし タイ4拠点、ベトナム1拠点 なし
  • ※ 2026年4月現在、WRI Aqueduct4.0による評価
  • ※ 拠点の立地する流域を評価したものであり、拠点個別の立地や対策を考慮したものではありません。
水ストレス地域における取水量・水消費量(2025年度)

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取水量 170千㎥(10.4%)
水消費量 55千㎥(11.1%)
  • ※ ()内はシチズングループ全体に対する割合
  • ※ 「水ストレス」がHighまたはExtremely highの地域を水ストレス地域としています。
水ストレス地域からの取水状況(国、2025年度)
図
  1. ※ グラフの数値は水ストレス地域、水ストレス地域以外からの取水量の合計です。

水リスク対応への取り組み

シチズングループでは、水供給リスクに対応した持続可能な水資源利用を推進するために、取水量の削減目標を設定して水使用の改善に取り組んでいます。また、水関連の法規制などの規制リスクへの対応および工場排水のクリーン化のため、排水処理施設からの排水品質をモニタリングし法規制値より厳しい自主基準値を定めて排水管理を実施しています。一部の工場では、法規制値を上回る独自の排水基準を、工業団地管理者との協議を通じて設定しています。

2025年度は水関連の重大な法令違反や規制等の不遵守、罰金・科料はなく水に関連する有害な影響もありませんでした。
なお、2024年度に埼玉県の1工場において、下水道排水のpHが基準値を一時的に超過する事象が発生しました。当該事象については是正対応を実施し、再発防止策を講じています。

サプライチェーンにおける水リスクへの対応

シチズングループでは、サプライチェーンにおける水リスクについても重要であると認識し、サプライヤー調査を継続して実施しています。2025年度は、サプライヤーの取水量削減目標の確認と、水リスクによる事業への影響度の確認を行いました。これらの調査結果を踏まえ、2026年度はシチズングループとしてのインパクトを算定し、水リスク低減活動を進めていく予定です。また、今後は水リスク低減活動に関する要請なども行っていく考えです。引き続きサプライヤー調査を継続し、水リスクを把握することで、サプライチェーン全体の最適化と事業継続性の確保につなげていきます。

シチズングループの取水量の推移

シチズングループ環境目標2030では、2018年比で取水量35%減という削減目標を設定して水資源の保全活動を進めています。

2025年度の国内取水量は1,194千㎥、海外取水量は432千㎥、合計取水量は1,626千㎥でした。その結果、2025年度取水量目標である2018年度比20%削減を達成しています。取水先は地下水43%、上水道39%、工業用水20%の割合でした。製造プロセス全般の水リスクに配慮する「サステナブルファクトリー」の実現に向けて、節水・高効率設備の導入や水の循環利用等を実施し、2025年度以降についても取水、排水量の削減を更に推進していきます。2024年度の取水量、水消費量、排水量については第三者検証を受けており、2025年度データについても2026年8月に第三者検証を受ける予定です。

取水源別取水量

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単位:千㎥
  2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度 2025年度
淡水の地表水(雨水) 国内 0 1 1 1 0 0 0 0
地下水(再生可能) 国内 590 562 546 583 640 657 690 694
第三者の水源(上水道水) 国内 473 443 399 410 381 347 331 332
第三者の水源(工業用水) 国内 240 231 158 216 199 188 176 168
取水量合計(国内) 1,303 1,237 1,104 1,209 1,220 1,193 1,197 1,194
淡水の地表水(雨水) 海外 0 0 0 0 0 0 0 0
地下水(再生可能) 海外 10 4 2 4 2 5 12 7
第三者の水源(上水道水) 海外 537 503 389 414 375 336 316 298
第三者の水源(工業用水) 海外 375 210 256 233 185 140 167 127
取水量合計(海外) 922 717 648 651 563 482 494 432
取水量合計 2,225 1,954 1,751 1,860 1,783 1,674 1,692 1,626
  • ※ なお、河川・湖沼、海水、採石場で採取された水、外部からの排水の使用はありません。

【事例紹介】半導体製造工程における水のリサイクル

シチズン電子

半導体の製造においては、シリコンウェハーからチップを切り出すダイシングの工程で大量の水を必要とします。シチズン電子株式会社ではダイシング装置から発生する切削排水を回収してろ過させた後、繰り返し供給するシステムを採用しています。このシステムにより装置1台あたり年間1,104,902Lの水使用の削減が可能であり、限りある水資源の有効活につなげています。

排水処理分科会による排水処理レベルの向上

シチズン時計マニュファクチャリング

シチズン時計マニュファクチャリング株式会社では、排水処理施設を保有する各拠点の担当者が集まり、2024年度より「排水処理分科会」を立ち上げました。本分科会は、工場ごとに異なる設備や運転条件、課題を共有し、グループ全体として排水処理レベルの底上げを図ることを目的としています。
活動内容としては、トラブル事例の分析をはじめ、運転の最適化、各工場が抱える課題、設備更新に関するノウハウなど、現場ですぐに活用できるテーマを中心に、工場見学や意見交換を行ってきました。また、排水処理の経験者が少ない状況を踏まえ、今後の維持管理を継続していくため、人材育成に向けた基礎知識の教育および情報共有にも取り組んでいます。
これらの活動を通じて、環境事故ゼロと安定操業の実現に向けた拠点横断的な連携を強化しています。今後も、環境リスク低減と技術力向上に貢献する分科会として、継続的な活動を展開していきます。