品質コンプライアンスについての基本的な考え方
シチズングループでは、2018年度に設置された「グループ品質コンプライアンス委員会」が中心となり、品質コンプライアンスに対する認識の共通化を確実なものとするため、「シチズングループ行動憲章」第2条を基に各事業の状況を踏まえて策定された「シチズングループ品質行動憲章」の周知活動を海外拠点も含めて展開してきました。
本委員会はグループ各社の品質担当役員で構成され、事業を超えたシチズングループとしての視点から品質に関するコンプライアンス遵守の浸透に努めており、内部通報制度の実効性向上やESG/SDGsの視点も考慮しながら、各事業分野のステークホルダーの要請に応える活動も推進しています。
なお、本委員会は2022年度からオブザーバーとしてグループ各社の品質保証部門の部長も参加する委員会となっており、グループ視点に加え各事業の業務執行上の視点からの意見も含めた討議を重ねることで、品質管理の根源である品質コンプライアンス遵守に努めるなど「品質不祥事」を起こさない組織づくりに取り組んでいます。
グループ品質コンプライアンス委員会体制図
品質コンプライアンスロードマップの進捗
2024年度の品質コンプライアンスの強化について、「シチズングループ品質行動憲章周知活動件数2回」の目標を達成しました。国内外の従業員に対する研修や海外拠点での品質行動憲章ポスター掲示やイントラ掲載による周知活動など、品質行動憲章の周知活動を継続して実践しています。
また中期経営計画の最終年度にあたる2024年度には、これまでの品質コンプライアンス委員会の総括と、2030年度ロードマップの見直しを実施しました。2030年度ロードマップを見直すにあたり、各社の現状を踏まえたロードマップにすべく、アンケート形式によるグループ各社の概況調査を実施しました。調査で得られた状況を反映するとともに、外部の有識者の意見も参考にして2030年度ロードマップを見直しました。
2025年度からの新たな取り組みとして、これまで、主に国内拠点で実施した施策を海外拠点で実施する計画となっています。
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2025年度 |
2026年度 |
2027年度 |
2030年度 |
目標 |
- 海外拠点における品質コンプライアンス体制の基盤確立
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- グループ全体での自律的な品質コンプライアンス体制の実現
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KPI |
- 海外拠点での品質コンプライアンス監査体制構築(監査基準、チェックリスト作成)
- 国内主要拠点(※)での品質コンプライアンス危機対応訓練実施率70%
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- 海外主要拠点の品質コンプライアンス監査実施率70%
- 海外主要拠点での品質コンプライアンス危機対応訓練実施率70%
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- 海外主要拠点の品質コンプライアンス監査実施率100%
- 海外主要拠点での品質コンプライアンス危機対応訓練実施率100%
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- グループ主要拠点の品質コンプライアンス監査実施率100%
- 全主要拠点での品質コンプライアンス危機対応訓練実施率100%
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施策 |
- eラーニング実施(中国語・英語)
- 海外拠点の品質コンプライアンス体制の基盤整備
- 国内主要拠点(※)での品質コンプライアンス危機対応訓練の実施(品質行動憲章違反の影響度の理解促進)
- ESG要求に関連する品質コンプライアンスリスクの把握体制構築
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- eラーニング実施(タイ語)
- 海外主要拠点での品質コンプライアンス危機対応訓練の展開
- ESG要求に関連する品質コンプライアンスリスクへの対応手順確立
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- eラーニング実施(ベトナム語)
- 海外拠点での品質コンプライアンス体制の定着化
- グローバル共通の品質コンプライアンスに関する報告体制確立
- 海外拠点危機対応マニュアル整備
- ESG関連の品質コンプライアンスリスク管理体制の確立
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- 全主要拠点での自律的な品質コンプライアンス活動の実現
- グローバル品質コンプライアンス体制の確立
- グローバルでの品質コンプライアンス危機対応体制の確立
- ESG要求に関連する品質コンプライアンスリスクの予防的管理体制確立
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- ※ 国内主要拠点:主要拠点の判断・選定はリスクベースで検討
品質コンプライアンス強化に向けた取り組み
グループ品質コンプライアンス委員会の取り組み
品質に関するコンプライアンスリスク対応を主要な役割とする「グループ品質コンプライアンス委員会」の、2024年度の活動は以下の通りです。
- 品質コンプライアンスに関する概況調査(リスクおよび取組み状況の確認)
- 品質コンプライアンス研修資料(英語版、中国語版)作成
- 品質コンプライアンス監査の実施
- 外部の有識者を交えた2030ロードマップについての議論
同委員会がグループの品質担保の要となり、各社の品質担当部門や監査部門等と連携しながら、グループ監査や研修など品質コンプライアンスの強化・向上を推進しています。
グループ品質コンプライアンス委員会:2024年度の議題
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実施日 |
活動内容 |
第1回 |
2024.06.12 |
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第2回 |
2024.10.03 |
- 2024年度ロードマップ達成状況等確認
- 品質コンプラリスクおよび取り組み状況の現況把握に関する計画説明
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第3回 |
2025.01.20 |
- 品質コンプラリスクおよび取組み状況の現況把握、結果の共有
- 2030年度ロードマップ議論
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第4回 |
2025.03.12 |
- 2025~2027年度品質コンプライアンスロードマップ案の討議および合意
- 2025年度GQC委員会計画(案)
- eラーニング(英語版)の共有
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品質コンプライアンス研修の実施
シチズングループでは新入社員研修や新任役員研修の一環として品質コンプライアンス研修を実施し、グループ全体で品質コンプライアンス意識の向上を図っています。また、すべての従業員の品質コンプライアンス意識を高めるため、2024年度は国内の全従業員と海外の日本人駐在員を対象に、シチズングループ品質行動憲章に関するeラーニング研修を実施して、受講率99.8%の成果を挙げました。2024年度の参加実績は6,214名です。
「シチズングループ品質行動憲章」の海外展開
海外における品質コンプライアンス意識の周知徹底のため、これまで中国の拠点で実施していた「シチズングループ品質行動憲章」ポスター掲示を2021年度はタイとベトナム、フィリピンの製造工場で展開しました。シチズングループ品質行動憲章では、品質の維持に向けた取り組み事項のほかに、仕事に向かう姿勢などといった、グループの一員としてあるべき姿も掲げています。ポスター展示が海外の従業員もグループの一員であるとの自覚や心の拠り所になっているとの評価を得ており、今後も他拠点への展開を通じて品質コンプライアンス意識の向上を図っていきます。
海外製造工場でのポスター掲示の様子
不正再発・未然防止に向けた取り組み
シチズン電子株式会社では、品質コンプライアンスの強化に向けて品質コンプライアンス視点での監査を実施し、部門長含めた定期的な人事ローテーション、品質やデータの改ざんを防止するシステムをグループ内でいち早く導入するなど、不正の芽を摘み抑制につなげる取り組みを進めています。
また、品質コンプライアンスの維持・更なる向上のため、海外拠点も含めての品質やデータの定期的な監視、内部品質コンプライアンス監査の定期的な実施、社内認定試験所や品質保証部門の独立性維持を継続し、品質不正を再発防止しています。
お客様満足度向上の取り組み
一般のお客さま向けの製品を数多く手掛けるシチズン時計では、お客さまからのお問い合わせやご相談、苦情について真摯かつ迅速に対応する問い合わせ窓口を設置し、お客さま満足度の向上を目指しています。お客さまからいただいた大切な情報や問題点は、経営トップにタイムリーに報告するとともに各事業部門で情報を共有し、製品の改善やサービスの向上に結びつけています。製品の早急な修理・交換が必要な重大事案が発生した場合は、ホームページ上での告知を実施しています。なお2024年度のシチズン時計へのお問い合わせ件数は47,489件となりました。
【事例紹介】シチズンマシナリーの取り組み
精密工作機械メーカーのシチズンマシナリー株式会社では、製品を導入いただいたお客さまに対してアンケートを実施し製品の使い勝手や改善要望などの把握に努めています。故障などのお問い合わせに対しては、製品スキルに長けたスタッフをカスタマーサポートに配置して製品の状況について伺える体制を整備して、対処法のご説明や交換部品の送付を実施しています。修理が必要な状況であれば直ちに作業に出向くよう手配するなど、お客さまのビジネスに影響を及ぼす製品の稼働停止期間が最小限となるよう、迅速かつ適切な対応に努めています。
お問い合わせ内容については、品質保証部門が主体となって社内共有が図られ、製品の改良も含めた品質改善に役立てられています。なお修理業務の手引きや対応マニュアルは英文版を用意してグローバル対応が図られているほか、製品に関する最新情報や電子マニュアルの閲覧、操作・保守点検内容を動画で確認できる会員専用ポータル「アルカートサイト」を用意してお客さま満足度向上に努めています。
不具合・クレームへの対応
シチズン時計およびシチズン時計マニュファクチャリングでは、ISO9001の要求事項に基づき、独自の品質マニュアルを作成してQMS(Quality Management System)活動を展開しています。本マニュアルは、時計事業全体の品質マネジメントが確実に運用され、品質方針の達成やシチズングループ品質行動憲章の遵守を目的としています。更に、QMS活動の有効性を確認するための内部監査を年1回実施しています。
お客さまから寄せられたクレームに関して、「市場クレーム処理標準書」や「製品事故対応標準書」に基づく対処が行われます。製品やサービスの改善につながるクレームについては対応および「品質基準書」への追加や基準書の見直しが行われます。製品品質に関するクレームは迅速に対応するとともに、重大事案に関しては消費者庁・NITEへの報告をはじめ経営会議などの機会を通じて社長を含む役員に報告され、「重要なお知らせ」として自社サイトで公表するなど多岐にわたる対策を進めています。
不具合品の調査と是正処置について
シチズンマシナリー株式会社では、お客さまから製品の不具合についてのお問い合わせが寄せられた際に交換部品の送付や修理手配といった対応と合わせて、お問い合わせ内容に応じ関係者による応急対策会議を開催して情報共有や原因究明を進めています。その後は再発防止対策会議を実施して、経営トップへの報告や製品の改良などの是正処置がとられます。なお寄せられたお問い合わせ・クレームについては件数を集計して改善につなげていく定量的な確認体制を整えています。
また社内で判明した工程の不具合についても、再発防止策を講じて欠陥製品を市場に出さないための取り組みを実施しています。不具合内容や件数を把握した上で、標準書や作業マニュアルの改定、工程の改善を実践し不具合解消に向けた取り組みを実践しています。なお不具合情報は海外生産拠点にも直ちに共有して対策を適用するなど、グローバル規模での「全拠点同一品質」を実践しています。
不具合調査フロー