シチズンマシナリー株式会社
開発本部 制御ICT開発部
制御開発課 課長
市丸 大輔
2010年入社。電気設計、ソフトウェア開発業務に従事。
2024年から現職。工作機械の機械制御を担う。
シチズングループで時計事業に次ぐコア事業へと成長している工作機械事業。
顧客先でのエネルギー使用量が大きく、環境負荷低減の貢献度が高い製品だからこそ、
サステナブルな製品づくりが求められます。
機械制御を担う開発者が、省エネを実現するEcoBalance Machineについて語ります。
シチズンマシナリーの工作機械は、コンピューター制御で自動加工を行う自動旋盤機です。
時計部品を製造するために内製したのが事業の始まりですが、現在製造できるものは時計部品だけにとどまりません。
高精度な加工技術が評価を得て、自動車部品や半導体関連装置の他、医療分野や航空宇宙分野で使用する複雑な形状の部品など、世界中の多様な産業で活用されています。
加工できる素材も幅広く、チタンや真鍮(しんちゅう)、銅、アルミ、鉄、更には樹脂の加工もできます。
そんな工作機械の中で、従来の機種と比較して大幅に省エネを実現したのがEcoBalance Machineです。
工作機械は、企業間取引をする製品のため、顧客との付き合いが長いのが事業の特徴のひとつです。
マイナーチェンジやモデルチェンジも含めて、フロントマンである営業担当者が顧客の様々な要望をヒアリングしてきて、開発に生かしています。
近年の物価やエネルギー価格、人件費の高騰を背景に、多くの顧客から挙がった要望が「電気代の削減や省エネ化に対応した工作機械の開発」でした。
そして、業種は異なっても工作機械を使用する際の共通した“悩みの種”は切りくずにあったのです。
鉛筆削りをイメージすると分かりやすいのですが、素材を削り続けると切りくずがつながり、やがて素材に巻き付いてしまいます。すると、切りくずが絡まって切削の邪魔になるだけでなく、製品を傷つけて不良品が出てしまいます。
本来であれば24時間にわたって機械を稼働させ続けたいところですが、切りくず除去のために一時停止を繰り返さなければならず、生産効率がダウンしてしまう。一台一台、面倒を見なければいけないのが大変なんです。
工作機械の稼働を止めないことは、省エネかつ生産性の向上に直結します。
素材にまとわりつき、機械の稼働を止めてしまう切りくず問題への解決策。それは、切りくずを細かく分断することでした。
切りくずを細かく分断しながら加工ができるシチズン独自のLFV※技術は、切りくず処理の難しい材料に最適な加工方法です。
シチズンが業界で初めて工作機械に導入したもので、すべてのEcoBalance Machineに搭載しています。
LFV技術を搭載したEcoBalance Machineは、現場の人が終業後に帰宅して就寝し、翌朝出社しても問題なく動き続けているので、顧客から「安心して眠れる」という声が届きます。
機械の一時停止がなくなることで、生産性が格段に向上するのです。
更に、切りくずが細かく分断されて体積が小さくなることで、工作機械の中の掃除の頻度が大幅に減り、廃棄物輸送時のCO₂排出削減にもつながります。
EcoBalance Machineを導入して、その使い勝手の良さと省エネ化への手応えを実感する顧客からは「やみつきになる機械だ!」といううれしい声をいただきます。
現在、シチズンマシナリーの主要機種の多くはLFV技術が搭載可能となっており、LFV技術搭載機の累計出荷台数は約8,900台にのぼります(2016年4月~2026年3月時点)。切りくず分断技術のパイオニアとして、確かな信頼と実績を築き上げていると自負しています。
LFV技術に加え、空圧機器から吐出されるエアも最適制御に成功しています。エアは安定生産のために主軸内を常にクリーンに保つことや、製品を傷つけないために切りくずを除去するのに不可欠です。
一般的にエアは、連続して空気を吐出させますが、断続的に噴き出させることで消費量を抑えられるため、エアを最適制御するEcoBalance Machineは工場の電力消費の削減に直結します。
更に、アイドリング・ストップもCO₂排出量の低減に大きく貢献する省エネ機能です。
車が信号待ちや渋滞などで一時的に停車するとエンジンが自動停止するようなイメージで、工作機械が稼働停止中、サーボやファンモータ、ポンプなどの電力を遮断することで、不要な電力の消費を抑えることができます。
消費電力量の低減・自動化技術、精密加工はシチズングループの強みであると胸を張って言えます。
シチズングループにおける工作機械事業は、時計事業に次ぐ主力事業として、2027年度における売上高は連結売上高の約3割を占める1,000億円を目標としています。
私が担当する技術開発の世界では、実際に機械を使用する顧客の声が何よりも重要です。
私は顧客との距離が近い立場として3つの重点戦略の中でも特に「顧客価値の創造によるシェア拡大」に貢献したい。
製品開発を通じてお客様の自動化・省力化に貢献することこそが、仕事のやりがいなんです。
顧客の皆さんが安心してものづくりができるよう、これからも対話を重ね、シチズングループが持つ独自の優れた技術をもっと多くの人に知ってもらいたい。
そして、実感していただきたい。
顧客の声をしっかりと受け止めて真摯に向き合うことが、生産性向上や労働力不足に対する課題解決、ひいては事業の成長にもつながると信じています。
製造面での体制強化のため、シチズンマシナリーは2025年10月に岩手県北上事業所の工場を増設し、2026年9月に本格稼働予定です。
生産台数拡大とともに、今後も環境負荷低減につながる取り組みを進めて、更なる飛躍を目指します。
(※内容はすべて2026年6月時点のものです)