生物多様性の保全

シチズングループでは、生物多様性によってもたらされる生態系サービスの重要性や、事業活動が生物多様性に与える影響を認識し、「シチズングループ生物多様性ビジョン」を定め地域社会とともに生物多様性の保全に努めています。
また、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD: Taskforce on Nature-related Financial Disclosures) ※1の情報開示提言への賛同を表明し、2025年4月にTNFD Adopter ※2に登録するなど、自然資本に関する適切な情報開示の準備を進めています。

  1. 自然に関する企業のリスク管理と開示枠組みを構築するために設立された国際組織のこと。
  2. TNFD提言に沿った情報開示を行う意思を表明した企業・組織のこと。

シチズングループ生物多様性ビジョン (2020年4月 改定)

基本方針

シチズングループは、事業活動が生態系サービスの恩恵を受け、また、生態系に影響を与えていることを認識し、人と自然が調和し心豊かに安心して暮らせる持続可能な市民社会に貢献するため、グループ一体となって生物多様性の保全活動に取り組みます。

重点施策
  1. 自然をいつくしみ、自然と共生する気持ちを喚起する魅力的な環境配慮型製品やサービスを提供します。
  2. 生物多様性に配慮した事業所構内の緑化を推進します。
  3. 環境への取り組みについての情報を積極的に開示し、社会との生物多様性に関するコミュニケーションを深めます。
  4. 地域社会における環境保全活動や生物多様性保全活動を推進します。
  5. 全従業員に対して、生態系サービスの教育を実施し、生物多様性保全への理解を深めます。

TNFD提言に基づく 自然関連情報開示

TNFDは、自然資本に関する事業のリスク・機会を適切に評価し、開示するための枠組みを構築する国際的なイニシアティブであり、2023年9月に最終提言を公表しました。シチズングループはTNFDの理念に賛同し、2025年4月にTNFD Adopterへ登録しました。

2025年度の活動

2025年度は、TNFDが推奨するLEAPアプローチに基づき評価の土台となる以下の2つのステップを実施しました。

  1. Scoping:評価対象範囲の決定
    売上比率や事業特性に基づき、評価対象とする事業領域の選定および文政期範囲の画定を行いました。
  2. Locate:自然との接点の特定と優先地域の選定
    事業活動と自然との接点を地理的に特定し、生物多様性の重要性やリスクの観点から、「優先地域(Priority Locations)」を選定しました。
図

1.Scoping(スコーピング)の実施

シチズングループは、売上比率の半分以上を占める主要事業である時計事業を評価対象として選定しました。 本ステップでは、 事業の特性から原材料調達 (上流) から製品廃棄 (下流)に至るバリューチェーン全体に 自然関連の課題が存在するという作業仮説を立てました。

2.Locate(発見、対象地点の特定)の実施

TNFDが推奨する手法に基づき、 直接操業およびバリューチェーン(上流・下流) 全体の自然関連課題について、ENCORE を用いた網羅的な依存・影響のスクリーニングを実施しました。その結果、原材料調達(上流VC) における農林水産業や鉱業での高い依存・影響、および製品廃棄 (下流VC) における廃棄物処理プロセスの影響を確認しました。
直接操業については、研究開発やデザインにおけるインスピレーションの源泉としての 「文化的サービス」への高い依存の可能性や、製造工程における汚染物質・大気排出の影響が比較的大きい可能性があることを特定しました。
この全体評価を受け、2025年度は評価の精度を高め実効性のある対応策を検討するため、まずは自社で直接管理が可能であり、かつ事業基盤として重要性の高い 「国内の直接操業拠点 (17工場)」を、地域固有の特性を踏まえた詳細評価の対象としました。

  • ※ Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposureの略。Global Canopy(英国シンクタンク)と国連環境計画によって運用されている自然関連の依存とインパクトを分析できるツール。
自然への依存のヒートマップ
動物由来エネルギー供給 バイオマス供給 固形廃棄物の修復 土壌・堆積物保持 水質浄化 土壌質調整 汚染物質の自然希釈 生物的制御 空気浄化 洪水緩和 遺伝資源 地球気候調整 水供給 動物資源の再生産 騒音緩和 感覚影響の調整 地域気候調整 受粉 嵐緩和 水流調整 降雨調整 レクリエーション 視覚的快適性 教育・研究サービス 精神・芸術・象徴
上流
バリューチェーン
非鉄金属鉱石の採掘 VL L M VH M VL H H H VL L L M H VH
鉄鉱石の採掘 VL L M VH M VL H H H VL L L M H VH
その他の鉱業及び採石業 L L M VH M VL H H H VL L L M H VH
原油の抽出 L L VL M VL H H M VL L L L M
林業及びその他の林業活動 L VH M VH VH VH H M H VH VH H H VH M M H VH
伐採 M VH M VH H H H M M VL VL L M
繊維作物の栽培 M VH M VH VH VH M H M M VH VH H VL VH VH M H VH
牛及び水牛の飼育 VH M VH H H L M M M M M H VL VL VL M H H VH VH VH
水産養殖 VH VH VH VH M M H M H M M H VL H H H VH
化石燃料エネルギー生産 M M M VL M M H VL L L H
直接操業 自然科学及び工学に関する研究及び実験開発 L L VL M VL VL VL VL M L L VL VL L L L L VH
専門的デザイン活動 VL VL VL L VL VL L L VL VH VH VH
その他の金属製品の製造
;金属加工サービス活動
M L M L M VL M VL VL L M M
測定、試験、ナビゲーション及び制御機器
;時計及びクロックの製造
L L M L VL M VL M VL VL L M M VL
宝石、ビジュート及び関連品の製造 M L M L VL M VL M VL VL L M M VL
プラスチック製品の製造 L L M L VL M VL L VL VL L M M VL
革の鞣し及び仕上げ
;荷物、ハンドバッグ、鞍及びハーネスの製造
;毛皮の仕上げ及び染色
M L L VL M M VL M VL L M M VL
下流
バリューチェーン
廃棄物の処理及び廃棄 VH VL M M VL VL VL VL M VL VL L M M
廃棄物の収集 VL M M VL M L L M M
自然への影響のヒートマップ
騒音・光等の外乱 淡水利用 地域 GHG排出量 海底利用面積 GHG大気汚染排出 生物資源抽出 非生物的資源抽出 有毒物質の排出 栄養汚染物質の排出 固形廃棄物の排出 土地利用面積 水使用量 外来種の導入
上流
バリューチェーン
非鉄金属鉱石の採掘 VH VH M VH H H VH H M M L
鉄鉱石の採掘 H H M H M H H VH M L VL
その他の鉱業及び採石業 H H H H H M H M M M VL
原油の抽出 VH VH H VH M VH L L L L
林業及びその他の林業活動 H VH H H L VH M H
伐採 H M M VH VH M L VH M M
繊維作物の栽培 M H M H H H H H H M
牛及び水牛の飼育 M H H H H H VH VH H H
水産養殖 M H M H VH H H H M M H
化石燃料エネルギー生産 VH M VH VH VH H M M
直接操業 自然科学及び工学に関する研究及び実験開発 L L L VL L M L M L
専門的デザイン活動 VL VL VL VL VL M L
その他の金属製品の製造
;金属加工サービス活動
M L L VH L L M
測定、試験、ナビゲーション及び制御機器
;時計及びクロックの製造
M M H M L L M
宝石、ビジュート及び関連品の製造 M M H M L L M
プラスチック製品の製造 M M M VH M L L
革の鞣し及び仕上げ
;荷物、ハンドバッグ、鞍及びハーネスの製造
;毛皮の仕上げ及び染色
M L M H M M L M
下流
バリューチェーン
廃棄物の処理及び廃棄 H H M H H M M M M
廃棄物の収集 H H M M M M M M M

更に、時計事業の国内の直接操業拠点(17工場)における自然関連の依存と影響を把握するため、TNFDが推奨する評価ツール を活用し、優先地域の特定を行いました。本フェーズでは、事業活動が立地する地域の自然特性、重要生態系の存在、水資源の状況、土地利用の変化などの観点から分析を行い、以下の3地域を優先的な評価対象(Priority Locations)として選定しました。

  • ※ 評価ツールにはTNFDのツールカタログ等に示されている主要な外部評価ツールである、WWF Biodiversity Risk Filter、WWF Water Risk Filter、WRI Aqueduct Water Risk Atlas、Global Forest Watch、およびIntegrated Biodiversity Assessment Tool(IBAT)を活用。
図
地域 特定理由
①岩手県・八幡平近郊 八幡平近郊の森林生態系や高原湿地など多様な自然環境が分布し、法的に保護された生態学的に影響を受けやすい地域と特定
②山梨県・富士山近郊 水源涵養地としての重要性が高く、生物多様性の重要性が極めて高く、法的に保護された、国際的にも重要な影響を受けやすい地域と特定
③埼玉県・荒川流域 流域特性・水資源利用・洪水リスク等を踏まえ、物理学的な水リスクが高い地域と特定

2026年度の予定

2026年度も引き続きLEAPアプローチに沿って、時計事業における「Evaluate」および「Assess」の2点についての分析を進める予定です。
具体的には、「Evaluate」フェーズではインプット、アウトプット、立地特性、ハザード情報などをアンケートで確認し、自然関連の依存と影響を科学的に診断します。つづく「Assess」フェーズでは「Evaluate」フェーズで診断した依存と影響が、自社にとってどのような「リスクと機会」になるかを特定し、短期~長期の財務影響を評価します。

生物多様性保全活動の 推進

シチズングループでは、グループ生物多様性ビジョンに基づき、事業を行う地域の生物多様性に関する課題解決や保全活動を継続して行っています。
シチズン時計では、シチズンブランドの腕時計の購入時にボックス(時計を入れる箱)不要を選択することで、国際NGO「NICE」を通じてマングローブの苗1本を寄付する『Eco Tree ACTION』を2020年から始めています。また、シチズン時計では紙で印刷していた9言語の取扱説明書の電子化を同年から進めており、年間でCO₂排出量20トン削減(杉の木1,400本の年間吸収量に相当)・紙は37トン(バス3.7台分)の削減効果が得られています。
またシチズン時計では、2030年までに国土の30%以上を自然環境エリアとして保全する環境省の「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」に賛同し、2023年度に同アライアンスに参画しました。
今後、自然・生物多様性に関する影響や依存、リスク、機会について特定、評価などの検討をすすめ、TNFD提言に沿った情報開示を推進していきます。

※ TNFD:気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に次ぐ非財務情報開示の枠組みとして2021年に設立された国際イニシアチブ。TNFDでは、自然環境や生物多様性に関するリスク・機会の情報開示を企業に促す枠組みを構築し、自然資本に損失を与える資金の流れを反転させることで、生物多様性の回復を目指しています。

【事例紹介】 時計の箱が マングローブ1本になる 『Eco Tree ACTION』

シチズン時計

2020年11月1日よりシチズン時計では、シチズンブランドの腕時計の購入時にボックス不要を選択することで、国際NGO「NICE」を通じてマングローブ の苗1本を寄付する『Eco Tree ACTION』を行っています。

2025年度は約20,600本の苗を寄付しており、約20,600個のボックスは、CO₂排出量に換算すると約1.96トン(杉の木約140本の年間CO₂吸収量に相当)となります。

マングローブは大気中の多くの二酸化炭素を取り込み、気候変動の要因とされる地球温暖化の防止に寄与します。またマングローブの植樹は、汽水域に生息する多くの生物の多様性を守るだけでなく、沿岸地域に住む人々の暮らしを守ることにもつながっています。

  • ※ 海水と淡水が入り交じる汽水域に生育している植物を総称して「マングローブ」と呼んでいます。
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Eco Tree ACTIONイメージ図
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マングローブを植樹する様子
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マングローブを運搬する様子

【事例紹介】 森林環境や地域社会に配慮した「FSC® 認証紙」の活用

シチズン時計

シチズン時計では、森林の違法伐採や環境破壊に加担しないよう、時計を収めるボックスや付属書、パンフレットなどの販促物に、「FSC®認証紙」の採用を進めています。

FSC®認証とは、適切に管理された森林からの木材や、再生資源、その他の管理原材料からつくられた製品を目に見える形で消費者に届け、それにより責任ある森林管理を消費者が支える仕組みです。残念ながら、市場に流通する木材の中には、違法伐採された木材やしっかり管理されていない人工林から過剰に伐採された木材が含まれています。認証製品を選ぶことで、適切な森林管理を行う林業者や地域のサポートになり、世界全体の森林保全へとつながります。

次の世代に豊かな森を受け継いでいくために、貴重な森林資源を使用する責任と日々向き合っていきます。

  • ※ FSC®:Forest Stewardship Council®/森林管理協議会 FSC®N002484
    www.fsc.org 別ウインドウで開きます
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【事例紹介】 事業所敷地に生息する 絶滅危惧種の保護活動

シチズンファインデバイス、 シチズンマシナリー、 シチズン時計マニュファクチャリング

シチズングループではシチズンファインデバイスとシチズンマシナリーの2つのサイトで自然共生サイトに認定されています。

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自然共生サイト認定ロゴ

絶滅危惧Ⅰ類に指定されているオオルリシジミの生息地のひとつである、シチズンファインデバイス株式会社の北御牧事業所(長野県東御市)では、地域の「オオルリシジミを守る会」の一員として、2003年より食草である豆科の植物「クララ」の植栽や害虫駆除など生息地の保全に取り組んでいます。
また、敷地内にて開催される「親子観察会」への協賛を通じ、地域社会の皆さんに保全活動の理解を深めていただくお手伝いもしています。
2024年10月には環境省より「自然共生サイト」に認定されました。

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食草「クララ」にとまる
オオルリシジミを撮影
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オオルリシジミ

またシチズンマシナリー株式会社の管理地内において、環境省レッドリストに登録されている「ミヤマシジミ」「エゾアカヤマアリ」など希少な生物・植物の生息域を有しています。2024年2月に同省が定める生物多様性の保全区域「自然共生サイト」認定を受けたことから、サステナビリティ推進チームのもと保全活動を実施しています。

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ミヤマシジミ
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エゾアカヤマアリ

【事例紹介】 「CITIZENの森」緑の認定SEGES 「そだてる緑」を取得
 国土交通省 「優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)」に 「CITIZENの森」が 第1号に認定

シチズン時計

2019年に地域災害予防として、老朽化した工場を撤去、工場立地法緑化率を満たすためその跡地を緑化、「CITIZENの森」が誕生しました。2021年には事業所初のグッドデザイン賞を取得、2023年にはSEGES(社会・環境貢献緑地評価システム)「そだてる緑 Excellent Stage1」も取得しました。

2024年には国土交通省が認定する「優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)」の第1号に認定されました。

従業員のウェルネス向上、地域の環境改善の視点に立ち、武蔵野の雑木を形成する在来種によって緑を構成しました。

生態ネットワ-クに配慮し、鳥や虫の飛来しやすい場を提供しています。

今後も植栽管理計画に基づき緑の維持管理と自然・生物との共生に努めます。

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「シチズンの森」イメージ

地域と協働した森林保全の取り組み「根羽村 シチズンの森」

シチズン時計

シチズン時計は、「都市と森をつなぐ」をキーワードに、森林保全活動に取り組む一般社団法人more treesとパートナーシップを締結し、地域と協働した森林保全活動を推進しています。
その具体的な取り組みのひとつとして、長野県下伊那郡根羽村において「根羽村 シチズンの森」を展開しています。
根羽村は、村の面積の約92%を山林が占める自然豊かな地域で、森林資源と向き合いながら、持続的な森づくりに取り組んできた歴史を有しています。森林資源と向き合い、持続的な森づくりを続けてきた根羽村の地域性を踏まえ、シチズン時計は地域関係者と連携しながら植林活動や森林保全に向けた取り組みを進めています。
本活動では、多様な広葉樹を中心とした森づくりを通じて生物多様性の保全を図るとともに、森林や林業について理解を深める機会の提供や、国産材の活用促進などを通じて、地域とともに多様性のある森林環境の維持・発展を支援しています。
また、地域の森林組合およびmore treesの協力のもと、従業員が現地を訪れ、植林活動や森林・林業の現場を体験する機会を設けています。こうした活動を通じて、自然環境と人の営みの関係への理解を深め、環境保全に対する意識向上につなげています。
シチズン時計は今後も、地域社会との連携を大切にしながら、長期的な視点で森林保全および生物多様性の保全に取り組んでいきます。

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根羽村 シチズンの森の看板