世界初※1、光プローブを使用した電流波形測定用電流センサー 「OpECS」を開発 最高周波数帯域150MHz、電流レンジ±140A~ 高周波・大電流パワー半導体の電流値を正確に測定
シチズンファインデバイス株式会社(本社:山梨県南都留郡富士河口湖町、社長:篠原 浩)は、世界初となる光プローブを用いた電流波形測定用電流センサー「OpECS(オペックス)」※2を開発しました。主に高周波、大電流のパワー半導体用の正確な電流測定が可能です。本製品は4月下旬から販売を開始します。
※1 光プローブを用いた電流センサーとして。2024年3月、当社調べ
※2 Optical-probe Electric Current Sensor
■開発の背景
パワー半導体は電気自動車(EV)や再生可能エネルギー、スマートグリッド、5Gなどの分野で需要が拡大しており、2030年代をピークに市場規模が拡大すると予想されています。一方でパワー半導体の技術開発には電流測定が必須ですが、従来の電流測定器では、パワー半導体特有の高周波、大電流を正確に測定することができない、基板に実装されているものを直接測定できない、という課題がありました。
そこで当社は、中核技術である光学、成膜、脆性材料加工の技術を融合し、光プローブを用いた磁気光学式の電流センサー「OpECS」を開発しました。本製品のセンサーヘッドは光学部品のみで構成され、電気部品を使用しないため、高い周波数において測定可能な電流が制限されるという課題(周波数ディレーティング)が発生しないなどの利点があり、高周波・大電流における正確な測定が可能です。
■主な特長
1.OpECSの構成
- 光プローブのセンサー部とコントロールユニットで構成。
- オシロスコープと接続することで、測定した電流を波形として確認することが可能。
2.光プローブを使用した磁気光学式測定により高周波、大電流の電流測定が可能
- 電流が流れる際に発生する磁界を、磁気光学効果によるファラデー回転 ※3を利用して測定し、電流に変換する。
- 光プローブのセンサー部は、光ファイバーと磁性材料のセンサーヘッドで構成され、電気部品を使用していないので、電磁ノイズの影響を受けず、また誤って大電流を印加しても破損したり感電したりしない。
- 直流、交流の測定が可能。交流測定では、一般的な電流センサー(ロゴスキーコイル)の測定限界の約1.5倍となる150MHzの高周波の測定が可能。
- 大電流(数千Aクラス)においても、測定対象物に適正な距離を保ってセンサーを配置することで測定が可能。
- ※3ファラデー回転 直線偏光を物質に透過させたときに偏光面が回転する現象のこと
3.極小センサーヘッドにより、狭所の電流測定が可能
- 既存の電流波形測定用センサー(カレントトランスフォーマー、ホール素子+カレントトランスフォーマー、ロゴスキーコイル)のように、測定対象物をクランプ(リング状のもので挟み込む)して測定する必要がなく、光プローブを近接、接触させるだけで、電流を測定。
- 光ファイバーの先端部分に配置されたセンサーヘッドは最細でφ0.45mmの極小サイズ。従来の電流波形測定用センサーでは測定不能だった狭所(例えば基板実装されたパワー半導体のワイヤー)の測定が可能。
4.ノイズ影響が無く、幅広い用途に使用可能
- 超低Ls※4の特性があり、測定回路への影響が極めて低くいためノイズ影響が無く、幅広い用途に使用可能。
- これにより、パワー半導体だけでなく、発電所等の大規模かつ大電力を扱う産業分野での使用も可能。
- ※4 Ls=インダクタンス:コイル状の部品に流れる電流によって発生する磁場によって生じる抵抗のこと。
クランプするセンサー-は全てこの影響を受けます。
5.磁界測定分野にも活用可能
- 磁気光学効果を用いており、磁気センサーとしても利用可能。
- 磁界の感知を約φ0.05mmという極小の領域で行うので、従来測定出来なかったモーターコイルの内部やワイヤー間に生じている磁界及び分布の実測ができ、設計から得られた解析結果との整合を取ることが可能に。
■主な用途・製品領域
①パワー半導体に代表される「高周波」「大電流」デバイスの正確な電流測定が求められる測定ニーズ
・ボンディングワイヤの電流波形測定
・スイッチング損失の測定
・バスバー・基板パターンなどの面内波形分布測定
②モーターコイルから発せられる「磁界測定」
・インダクタコイル・モーターコイル周辺の磁界測定
・コイルの面内磁界分布波形測定
・インダクタのフリンジ効果の波形確認
パワー半導体のスイッチング電流を測定
■測定方法
- ①のように導線の中心に感受部を接触させると最大感度が得られます。
- 導線を流れる電流の向きに対して、①のように配置した場合は、正の出力が得られ、②のように配置した場合は、負の出力が得られます。
- ③のように導線中心から離れた場所は磁界が弱まります。
従って適正な距離を保つことにより、測定可能電流(140A)より大きな電流の測定が可能になります。
■販売について
2024年4月下旬より国内市場におけるOpECSの販売を開始します。
国内市場における販売開始にあたり、測定器メーカー大手の岩崎通信機株式会社(本社:東京都杉並区 代表取締役社長:木村 彰吾)と販売特約店契約を締結しました。この提携パートナーシップにより、岩崎通信機の販売網を通じて販売を開始します。
今後、さらなる販売拡大を目的として、広く国内、海外の企業とOEMパートナーシップを構築する予定です。当社が開発したOpECSの市場展開により、技術者ユーザーへ新しい測定手法を提案し、開発の効率化や問題解決を可能にします。
■主な仕様
項目 | 仕様 | 備考 |
---|---|---|
周波数帯域 | DC~150MHz(-3dB) | - |
測定可能電流 | ±140 A | 左記、測定可能電流を超える測定を行う場合は、図-1を参照 Φ0.5mm銅線に接触させて測定 |
感度 | 25.78mV/A (0.073mV/A・m-1) |
(参考値) Φ0.5mm銅線に接触させて測定 |
出力電圧範囲 | ±4.7V | - |
ノイズ | 6.3mVrms | 無入力時、帯域200MHzの測定器にて |
直線性 | ±1%※1 | - |
出力コネクタ | BNC(50Ω終端) | - |
【センサーヘッド】 | ||
先端形状(Φ×L) | Φ0.45×1mm | (代表値) |
重量 | 約5g | - |
使用温度範囲 | -10~50℃ | - |
【コントロールユニット】 | ||
寸法(W×L×H) | 158.0×254.0×108.0mm | (突起物は含まない) |
重量 | 約2kg | (ACアダプタは含まない) |
使用温度範囲 | 15~35℃ | - |
電源電圧 | AC100~240V(50/60 Hz) | - |
消費電力 | 11W | - |
●OpECSは、シチズン時計株式会社の登録商標です。
お問い合わせ
- 製品に関するお問い合わせ先
- シチズンファインデバイス株式会社
開発部 OpECS課
TEL 0267-31-1120(直) - https://cfd.citizen.co.jp/inquiry_japanese
- 製品販売に関するお問い合わせ先
- 岩崎通信機株式会社
T&Mカンパニー
T&M推進部 フィールドサポート課
TEL 03-5370-5473 - Webサイト: https://www.iwatsu.co.jp/tme/contactus/
- メール: info-tme@iwatsu.co.jp