CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2025年受賞

NPO法人 こどもサポートステーション・たねとしずく

待望の「たねとしずくライブラリー」が始動

特定非営利活動法人(NPO)となり、代表理事となった大和さんは「たねとしずく」設立当初から温めてきた夢の実現に動き出しました。それは、訪問支援だけではカバーしきれない、子どもたちがいつでも訪れ、安心して過ごせる居場所をつくること。そして2023年8月、多くの方々の温かい支援に支えられ、その拠点となる「たねとしずくライブラリー」を、西宮駅のすぐ近くに開設しました。

ライブラリーでは、子どもたちがスタッフやボランティアと遊んだり、勉強を教わったり、好きな本を読んだりして過ごすことができます。夕食も提供しており、中高生には自習室も用意しています。大和さんは、ひとり親家庭の訪問支援を始めたころ、絵本が1冊もない家庭に出会い、大きな衝撃を受けました。そうした経験から、「子どもたちがいつでも本に触れ、安心して過ごせる場所をつくりたい」と考えるようになったと言います。ライブラリーの開設は、その想いを形にした取り組みの一つです。

また、ライブラリーの構想時から考えていた「一箱本棚サポーター」もスタートしました。著名人を含む多くの支援者が、本と寄付を通じて参加。それぞれの想いが込められた本棚には、多彩なジャンルの書籍が並び、子どもたちの新たな出会いを生み出しています。

ライブラリーに来ることが難しい家庭への支援として、絵本訪問もスタートしました。「子どもたちにとって、お母さんにお客さんが来て、話をしたり笑ったりすることは本当にうれしいことなんです。それを、絵本を届けるという形で自然にできるのは、私たちにとっても貴重な活動になっています」(大和さん)。

(左)安心して遊び学べるライブラリーは子どもたちのかけがえのない“居場所”となっている
(中)2階の自習室では中高生がスタッフやボランティアから勉強を教えてもらうこともできる
(右)ライブラリーは木の温もりが感じられる本棚に囲まれ誰もが思い思いの時間を過ごせる

子どもを中心に社会のあり方を考えることに魅力

ライブラリーの食事づくりを一手に担う李さんは、子どもたちのお腹も心も満たしている

現在、「たねとしずく」にはスタッフ10名、大人ボランティア10名、学生ボランティア14名が参加。月に1回スタッフ2名で訪ねるひとり親家庭の訪問支援はこれまで西宮市内で50世帯に行ってきており、現在は7世帯を支援中です。そのほか、食糧支援のパントリーも月に1回実施しており、生活の変化を確認し、母親同士が交流する大切な機会になっています。

スタッフの一人で、「a little」から大和さんと活動を共にしてきた李恭子さんは、「自分も専業主婦として、やりたいことができていないことに気づき、本来の力を取り戻すため活動してきました」と振り返ります。そうしたなかで「たねとしずく」を立ち上げたことにより、子どもを中心に社会のあり方を考えていくことの魅力を、身をもって感じてきたと言います。

そんな李さんは、ライブラリーで子どもたちに食事をつくっており、忘れられないエピソードがあると話します。それは、女子高生が中心となり、子どもたちや大学生ボランティアから、10分ほどの自分宛の感謝のメッセージ動画をサプライズでプレゼントされたことです。子どもたちにとって食事は単に空腹を満たすものでなく、安心感を生み、信頼関係を築く後押しとなっていることが伝わってきて、「ライブラリーの食事は本当にあったかい!」と実感したと言います。

(左)ライブラリー内はいつもスタッフやボランティアと子どもたちの笑顔で満たされている
(右)支援やイベントなどの新しいアイデアがあればすぐにスタッフが集まって話し合う

連携の旗振り役として地域をつないでいきたい

ライブラリーは、毎月130名前後の子どもたちが利用するようになり、居場所支援の拠点として大きな役割を果たすようになりました。それだけに子どもたちへの声がけも大切で、大和さんは「最近は子どもたちへ、少し先の未来を意識した声がけも大事にするようになりました」と話します。例えば、今の日本では子どもが夜中に歩き回っていても、どれだけの大人が注意するでしょうか。「だからこそ、本人の将来のため必要なことは、わが子のような気持ちで声がけしなければと思うのです」(大和さん)。

また、ひとり親家庭の母親に対しても、自らの力を取り戻せるよう、これからも寄り添いながら伴走していく考えです。大人の場合はこれまでに負った心の傷が深く、変化には時間がかかることもあります。しかし、「たねとしずく」を通じて同じ境遇の人とつながり、これまで一人で抱えていた悩みや思いを話せるようになると、驚くほど前向きな変化が生まれることがあると、大和さんは語ります。

今後に向け、李さんは一箱本棚サポーターや一般からの寄付を通じ、もっと仲間を増やしたいと熱く語り、「たねとしずく」の活動を地域の人と一緒に支える仕組みに広げたいと意欲を見せます。

大和さんは、「たねとしずく」の活動はすでに西宮市における地域資源の一つとして根付き始めていると実感しています。こうした資源が増え、お互いにつながり合うことで、西宮が子どもたちにとってさらに安心できる街になってほしい。そのために、市民をつなぐ旗振り役の一つとなり、行政や学校、NPOなど地域の連携をさらに広げていきたいと未来を見据えています。

(左)居場所を必要する子どもたちのため、ライブラリーの入り口は常に地域に開かれている
(右)長く活動を共にしてきた大和さん、李さんを中心に「たねとしずく」の活動はさらに広がりを見せようとしている
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