CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2025年受賞

NPO法人 こどもサポートステーション・たねとしずく

生まれた環境にかかわらず子どもたちの力を生かす社会へ

生まれた環境にかかわらず
子どもたちの力を生かす社会へ

女性の自立を目指し「a little」を設立

「この子に出会うことができたから、生きていてよかった!」

これは、ひとり親家庭の支援を続けている「たねとしずく」代表の大和陽子さんが、困難な境遇にありながらも懸命に子育てをする母親から聞くことができた、自身にとってかけがえのない言葉です。大和さんはこの体験を原点に、「誰もが生きていてよかった」と思える社会の実現に取り組んでいます。

東京でキャリアを積み、責任ある立場にもなっていた大和さんは、妊娠を機に「仕事を少し控えては?」と言われたり、旧姓で通していることに否定的な意見を言われたりと、勤務先で理不尽な対応を受けることが重なりました。自身のアイデンティティの喪失を感じた大和さんは退職を決意。家族と共に慣れ親しんだ兵庫に戻ることにしました。

移り住んだ西宮で子育ての勉強会などで知り合いが増えると、大和さんはそこに自分の知らない専業主婦の世界があることを知ったのです。特に印象的だったのが、「夫が許してくれず子どもの自転車が買えない」という一言で、子どもの買い物が自分の判断でできないことにショックを受けました。

その後、勉強会や地域の集まりで知り合った女性たちと会話を重ねるうち、心の奥にはそれぞれ自分のやりたいことや仕事への意欲があることも見えてきたのです。そこで、「女性でも一生続けられる、私たちにできる小さな仕事をしてみない?」と呼びかけると8人が賛同。2015年に、女性の自立や女性同士の連帯を目指す団体「a little」を設立したのです。

女性の自立などに賛同した主婦たちと「a little」を立ち上げ、現在はひとり親家庭の支援を続ける「たねとしずく」代表の大和陽子さん

ひとり親家庭支援の葛藤から新たな道へ

産前産後家庭の訪問支援では子どももお手伝いをして食事の用意をすることも

当時の「a little」の主な活動は2つ。一つは、子ども連れで安心して来られる託児付きの「ワンデイカフェ」で、オーガニックに関心のある主婦たちの発想から生まれました。そしてもう一つが産前産後の訪問支援で、自分たちも産前産後には苦労した実感があり、家事や赤ちゃんの世話を手伝うものでした。

この産前産後の訪問支援は約5年間続くことになりましたが、有償サービスだったため利用者は中流以上の家庭で、大和さんたちは「一番しんどい、ひとり親家庭を支援できていないのでは」と気づき始めたのです。そこで、無償で支援できるよう助成金を申請し、3年間のモニター事業としてひとり親家庭への訪問支援を始めました。

産前産後訪問支援は、生まれたての赤ちゃんのお世話をするので、訪問した側にとっても幸せを感じられる活動であったのに対し、ひとり親家庭はそれぞれに異なる課題を抱えており、それに向き合うのは支援する側にも負担が大きいことがわかりました。そこで、ペアで訪問する仕組みに変え、親と子のそれぞれに話を聞いたり、相手をしたりすることで、支援の質と支援者の安心感を高めるようにしました。

それでも、参加するメンバーは限られていたことから、「a little」のなかでひとり親家庭支援を続けることに葛藤を覚えた大和さんたちは、モニター事業が終了するタイミングで、「調査して終わりにはできない」と決断。5人が独立し、2022年7月に「こどもサポートステーション・たねとしずく」を設立したのです。

本来持つ力を思い出してもらうことに注力

名称に、「たね」が育つための「しずく」でありたいという想いを込めた新団体では、厳しい状況にある親だけでなく、子どもたちにも目を向けることに注力。「それによって、ひとり親家庭の子どもたちのしんどさがたくさん見えてきました」と大和さんは振り返ります。

活動自体も、家事を支援することに重きを置くのではなく、親と子の話をよく聞き、それぞれの頑張る力を支え引き出すことにしました。例えば、話をしながら子どもと一緒に料理をすることで、支援する時間内で1品しかできなかったとしても、子どもにとって「自分の力でできた」という自信につながることを大切にしたのです。

母親についても、ひとり親家庭の母親は自己否定が多く、「離婚によって以前してあげられたことができなくなることで、自分の選択が子どもにとって良かったのかどうか悩み、自信を失っているケースが多いのです」と話す大和さん。このため、自分たちが寄り添うことで、その人が本来持つ力を思い出してもらえるような支援を大切にしています。

(左)ひとり親家庭の子に体験格差をなくすため、親子で参加できるバーベキューなども実施
(右)親と子それぞれに寄り添ってよく話を聞くことで、子どもの本音を聞くことができる
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