CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2025年受賞

食事サービス ふたばの会

メンバーの高齢化が進み活動終了を決断

30年の歩みは決して平たんではありませんでした。介護保険制度の導入により業者が参入すると、「ボランティアは不要」と市から告げられたこともありました。しかし、「ふたばのお弁当は違うんだ」という利用者の強い支持が、存続の危機から救ってくれました。2011年の東日本大震災の際には断水・停電に見舞われながら、雪の舞う中を山の下の給水所まで水を汲みに行き、3日後から入手できる食材でお弁当づくりを継続。コロナ禍でも最大限の安全対策で「必ず届ける」姿勢を貫きました。

それでも、時の流れによりメンバーの高齢化が進み、市橋さんは活動の継続について決断をしなければならないことを誰よりも悟っていました。もちろん、助成金の中の活動費を削ってでも素材にこだわっているお弁当が、突然届かなくなったときのことを考えると、胸が締めつけられる想いでした。そうした葛藤の末、2024年7月、仲間の多くが80代を超えた現実を前に、ついに2025年3月での終了を決断し、八木山地区の広報紙に最後の「ボランティア募集」の告知を出したのです。

(左)配送車への積込作業。作った本人が丁寧に載せていく
(右)利用者に直接手渡すことで表情や体調などにも気を配る

応募した「最後のボランティア」が新たな希望に

それを偶然目にしたのが、訪問看護師で、起業準備中だった小川彩乃さんでした。そこには、「ボランティア不足」と書かれており、職業柄、地域の配食サービスの現状を見たいという興味と、実際の活動の様子を知りたいという想いから市橋さんに電話をかけ、ふたばの会を訪ねたのです。目にしたのは、訪問看護師としてこれまで見てきたものとは異なる家庭の味を詰め込んだお弁当で、「大きなテーブルの上にバーンと並び、周りを取り囲んで働く皆さんの元気な姿が印象的でした」と小川さんは話します。

しかし、そこで市橋さんから聞かされたのは、「来年の春には、この光景が見られなくなるのが決まっているの」という話でした。そのときのことを小川さんは、「これがなくなるのは本当にもったいないというのが率直な想いでした」と振り返ります。そして、たとえ半年でも地域に根差した活動は自分の学びになると考え、看護師の仕事を続けながら、週1回のボランティアから始めることにしたのです。ところがいざ始めてみると、ベテランメンバーが求める調理のクオリティは高く、「最初のころは、ひたすらニンジンを切ることしかやらせてもらえない日がありました」と笑顔を見せます。

それでも、食べることが健康に直結することを常に意識してお弁当をつくっている姿や、届けたときに相手がいなければ安否が確認できるまで連絡を取っている姿に感動を覚えるようになりました。「看護師として地域に入っていく自分とはまた異なるアプローチで、地域の皆さんを支えている人たちがいらっしゃったんだ」そんな想いが、次第に「この活動をなくしてはいけない」という想いに変わっていったと小川さんは言います。身近に接してそんな気持ちの変化を市橋さんも感じ取っており、お互いの想いが深まる中で、「この活動は誰かが引き継げば続けることができる。それがもし自分の判断にかかっているのならやってみようか」。そう決断をしたと小川さんは言います。

お弁当づくりに交替制を導入したり、地域の高齢者が集い楽しめる場としてのサロン活動など、新たな試みにも意欲的な新代表の小川彩乃さん

世代を超えた活動で地域全体の支え合いに

サロン活動の介護予防教室では、楽しみながら頭や手足の運動になるよう、体操やアクセサリーづくりなども行っている

2025年4月、ふたばの会は正式に新代表となった小川さんのもと、新たなスタートを切りました。会を支えてきたベテランも若い世代も無理なく働け、持続可能な地域支援となるよう、新体制から活動時間を見直したり、事前仕込みを採用したりし、管理栄養士による献立づくりも導入。以前は6時間以上かかっていた作業が、現在は3時間ほどで行えるようになりました。また、大切にしてきた家庭的な味は残しながら、医療や福祉の知見を活かした「きざみ食」や「あんかけ」など、個々のニーズに対応したメニューも取り入れています。

さらに、活動を通じて「人と人がつながることの大切さ」を改めて感じた小川さんは、かつてのふたばの会のメンバーが参加できるサロン活動を発案。事務所だった部屋を開放し、現在は旧メンバーだけでなく地域に住んでいる誰もが参加できる週1回のサロンとして、作業療法士が講師となって体操や脳トレを行う介護予防教室や、頭と手の運動になるアクセサリーづくりなどをはじめ、参加者からも積極的にアイデアが出て地域の人が集い楽しむ場になっています。

また、ふたばの会から食事を提供する子ども食堂との連携や、近くのコミュニティセンターに集まった人への惣菜販売など、会の活動を地域全体の支え合いに広げようとしています。

30年前に主婦たちの熱い想いから始まった高齢者を支える活動は、いま次世代にバトンが渡され、これからも地域になくてはならない活動としてしっかり受け継がれていきます。

次世代にバトンが受け継がれた「ふたばの会」の活動は、新旧二人の代表の想いをのせてこれからも続いていく
Page Top
Page Top