CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2025年受賞

食事サービス ふたばの会

家庭の味が暮らしを支え地域の絆を未来へとつなぐ

家庭の味が暮らしを支え
地域の絆を未来へとつなぐ

高齢化が進む地域の将来を主婦たちが危惧

八木山地区は坂が多く、当初の配食サービスは歩いて届けられる範囲からスタートした

「“ふたば”のお弁当は、家内がつくってくれた味と一緒なんです」

30年にわたり高齢者向けの配食サービスを続けてきた「ふたばの会」の前代表・市橋章子さんは、利用者の方から寄せられるそうした声が、これまで活動を続けてこられた一番の原動力だと話します。

もりの都・仙台の南部に位置する太白区は、緑豊かで温泉や歴史遺産などもある地域です。その中にある八木山地区は、高度経済成長期に大規模な開発が進み、市内有数の住宅地へと変貌を遂げました。

多くの住民はこの地で子育てを行い、PTA活動などを通じてコミュニティが形成されていきました。やがて大学進学や就職の時期を迎えると、子どもたちは地域を離れるようになり、多くは故郷へ戻ることなく次第に親世代だけが取り残されるようになっていったのです。そうした中、市橋さんたち50代を中心とした主婦の皆さんは、このままでは地域に残るのは自分たちと親の世代の高齢者ばかりになることを危惧。お互いに助け合っていかなければという想いから、月に一度みんなで「お茶飲み」に集まり、地域を盛り上げようとしました。

30年にわたり高齢者にお弁当を届けてきた「ふたばの会」の前代表、市橋章子さん

親の世代を支えるために食事の提供を開始

「お茶飲み」を始めてみると、手料理や手芸を持ち寄るなどしてみんなの楽しみになりましたが、集まる場を提供する家に負担をかけるといった悩みもありました。そんなとき、「65歳以上の高齢者にお弁当を届ける活動募集」という記事が市の広報に載ったのを見て、「食事を必要としているのは私たちの親世代だし、どうせ集まるならみんなでご飯をつくってあげたら喜ぶんじゃない?」と一念発起。1995年9月、市から借りた空き家を拠点に「ふたばの会」を設立したのです。名前の由来は芽吹きをイメージして「ふたば」と名付け、やがて三つ葉、四つ葉へと成長するようにと願いを込めました。

お弁当づくりは、週1回、10食程度を歩いて届けられる範囲からスタート。主婦がつくる家庭的なお弁当は評判が良く、「うちにも届けてほしい」という声が相次ぎ、届ける回数は週2回、週3回、週4回と増加し、6年目には週6回となり、提供エリアも拡大して運転ができる定年後の男性が配達に加わるようになりました。こうして最盛期には年間2万食を超え、1日に100食前後つくる日もあって、30年間の累計はなんと約45万食となっています。お正月や5月の連休なども、「食べるものがないと困るだろう」と何日かは届ける日を設け、「仲間の責任感とやさしさを実感しました」と振り返る市橋さん。現在は、1食550円の利用者負担と市からの助成金で運営が支えられています。

(左)月に1回みんなが集まった「お茶飲み」が活動の原点
(右)設立から30年以上歴史を刻んできた「ふたばの会」

「家庭の味」にこだわり安否確認にも貢献

最盛期に比べ減ったとはいえ、現在も1日に90食近くつくる日も多い「ふたばの会」のお弁当。人気の最大の秘密は、主婦が家族のためにつくる料理の延長線上にある「家庭の味」です。安全・安心を第一に、添加物や農薬に配慮した食材を厳選し、おひたしや煮物、焼き物など家庭で食べ慣れた味を大切に、彩りにもこだわって献立を考え、旬のサツマイモご飯や栗ご飯、冬至のカボチャなど季節感も届けています。お米も農家に直接依頼して毎週精米したてを安く提供してもらい、ガス釜で炊き上げたご飯のおいしさも評判です。

こうしたこだわりと愛情が込められたお弁当は、いつしか「味のふたば」として利用者に親しまれ、「家内がつくってくれた味と同じ」といったうれしい声が寄せられています。ご飯の量やアレルギーなど、利用者個々へのきめ細かな配慮も「ふたば」ならではです。中には、病院に通院している利用者が、お弁当を届けてもらうようになってから検査の数値が良くなったと言われた話や、胃の手術をした利用者が、経過が良いのでお弁当の献立表を持っていき病院の栄養士に見せ、「これはバランスがとれた献立で素晴らしい!」と褒められたエピソードもあるそうです。

お弁当を包む色とりどりの風呂敷も利用者に喜ばれ、結び目を解いてフタを取る瞬間のワクワク感も一緒に届けています。運転手と共にお弁当を届けるのはつくった本人で、利用者に直接手渡しながら交わす会話は、安否確認になると同時に、味の感想や直接感謝の言葉をいただく機会になっており、「メンバーのやりがいとなって、こちらが元気をいただいています」と市橋さんは実感を込めます。

(左)おひたしや煮物など家で作る料理の延長線上にある「家庭の味」が魅力
(中)主婦ならではのアイデアで、その場で彩り野菜などを加えることも
(右)色とりどりの風呂敷を開くワクワク感もお弁当の味を引き立てている
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