CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2024年受賞

小沢 ちえさん ほのさん

不登校の子どもにも親にも、「それぞれが『じぶんらしく』あることがいちばん大事」と話す小沢ちえさん

願いと自戒を込め「じぶんらしさ商店」誕生

知人の不登校の相談に対応した経験を機に、「カウンセリングを通して人の役に立ちたい」という想いを募らせたちえさんは、ほのさんと一緒に不登校専門のカウンセリングを始めようと考えました。ただ、母娘で一緒にやることはまず周囲に宣言して外堀を埋めてからほのさんに話したそうで、ほのさんは「すでに周囲の人が知っていて、断れる状況ではなかったのですが、不登校に悩む人のためならやってみようか」と思ったそうです。そして「その子の本当の気持ちが聞けなければ家族もどうすればいいかわからないので、心を開いてくれるきっかけづくりになればいいという想いで始めました」と振り返ります。

こうして始まった、不登校に悩む親子の相談を受ける母娘カウンセリングの評判は口コミで広がり、2022年には公式LINE「じぶんらしさ商店」を開設。不登校の子どもにもその親にも「じぶんらしくいてほしい。それがいちばん大事」という想いを込めた命名で、「私自身が子どもに親の考えを押し付けていましたから」と、自戒の念を込めます。

「じぶんらしさ商店」の母娘カウンセリングは、相談者の自宅を訪ねて対面で行うのが基本です。カウンセリング料は初回90分が1,000円で、2回目以降は60分9,000円、90分12,000円としており、ひとり親家庭は半額としました。有料にしたのは、無償だと相談に区切りがなくなってしまうことと、1回1回のカウンセリングをおざなりにしないためです。

2022年には公式LINE「じぶんらしさ商店」を開設。カウンセリングのほか、講演会などでも不登校に悩む親子に当事者だった自分たちの経験を伝えている

親同士、子ども同士で話を聞き心の扉を開く

実際のカウンセリングでは、初回の90分は前半の45分を親同士と子ども同士に分かれて話を聞く時間とし、残りの45分は親子が一緒になって話をします。特に、子ども同士で話を聞く時間を設けていることがポイントで、「ほのがゲームやアニメなど共通の話題で話しやすい環境をつくることにより、親に話したことのない本当の気持ちを打ち明けてくれる子が多いんです」とちえさんは言います。

それを受け、残りの45分では、ほのさんに心を開いてくれた子どもの気持ちに配慮しながら、相談者の親子がお互いの想いを伝え合える場をつくれるようお手伝いをし、それぞれに「じぶんらしさ」を見つけてもらうことを目指します。

カウンセリングは自宅以外にも、名古屋市内の金山で毎月開催されるマルシェで、ひとり親家庭を対象に無料で不登校の相談に対応しています。こちらも「じぶんらしさ商店」を立ち上げた2022年から雪の降る真冬も猛暑の夏も四季を通して休まず続け、ときには子どもが1人で悩みを相談に来たこともあると言います。

また同じ相談者が2回、3回と続けて来ることもあり、「私たちがこのマルシェに来るのをやめたら、その親子を見放すことになるという気持ちもあり、それがずっと続けている大きな原動力かもしれません」と、ほのさんは寄り添ってきた相談者に想いを馳せます。

金山のマルシェでは、ひとり親家庭を対象としたフードパントリーの準備も手伝いながら不登校のカウンセリングを行っており、「悩みを持つ人たちのためこれからも続けていきたい」とほのさんは話す

不登校に悩むすべての親子に「じぶんらしさ」を!

(上)ネットで公開しているほのさんのイラスト
(下)「じぶんらしさ商店」のチラシのイラスト、デザインもほのさんが担当

公式LINEの登録者数はすでに100組にのぼり、これまで実際に不登校の相談に対応してきた親子も80組を超えて、現在進行形で対応している親子も数組います。

ただし、自分たちの不登校カウンセリングは、「相談者が抱える問題を解決することではありません」とちえさんは明言します。そうしたスタンスだと、自分たちの考えを相手に押し付けることになり、「とにかく、私たちにできることは話に耳を傾けることであり、それによって相手の気持ちが楽になり、子どもが自分の頭で考えて選択することの大切さに気付くきっかけになればうれしいのです」と。

そんなふうに自ら絵の道を選択したほのさんは、現在はイラストレーターとして活動。ネットに自身の作品をあげて気に入った方からの依頼に応えるほか、「じぶんらしさ商店」を紹介するチラシのイラスト、デザインも自分でつくり、不登校カウンセリングの発信にもスキルを生かしています。

ちえさんとほのさんの変わらぬ願いは、自分たちがかつて不登校の当事者として困難と向き合い乗り越えたように、相談を受けた親子に一歩を踏み出してもらうことです。その想いを込め、ちえさんは自分の経験をまとめた本を出版する準備を進めており、新たな夢を胸に母娘カウンセリングを続けています。

不登校の子どもの数は現在も増え続けており、二人の母娘カウンセリングはこれからも大切な役割を果たしていく
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