もちろん、三登さんの話を聞いて初めて原爆の実相に触れるのは外国人だけではありません。卒業旅行で広島を訪れた学生のなかには、「自分の国で起こったことなのに、22年間知る機会がなかったことが悔しい」と話す若者もいると言います。「ですから、いちばんいいのは自分のようなガイドがいなくても、皆に原爆の実相を知る機会が与えられることなのです。でも、実際にはそうなっていません。だから、1日も休まず続けていかなければという気持ちになるのです」。
そんな三登さんの元には、ガイドをした世界中の人からお礼のメールが届きます。原爆の実相を聞き、そこに何を感じ、これからどんな行動をとるかは人それぞれですが、その一つ一つの出会いが平和の種まきになっているのです。
平和記念資料館には、1981年に広島を訪れたローマ法王ヨハネ・パウロ二世が核兵器廃絶を訴えた言葉が刻まれた碑があります。三登さんはガイドを行う際、その一節「過去を振り返ることは、将来に対する責任を負うこと」を紹介しています。そこには、「『真実』を伝えることはできませんが、『事実』を積み重ねることで『真実』に近づくことはできると思っています。だからこそ、同じ過ちを繰り返さないためにも事実を伝えることが大事なのです」という信念があり、三登さんはその熱い想いでこれからもこの場所に立ち続けると言います。