2021年度受賞
飯田 和幸さん
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人生そのものを指導する授業に
私たちも多くを学びました帯広少年院 首席専門官
佐々木 善生さん
私は少年たちに矯正教育を行う部署の責任者として、飯田先生に指導していただいていた絵画クラブの活動が円滑に進むよう、指揮をする役目をさせていただきました。
初めてお会いしたときは、体が大きく、黒っぽい服にサングラスをしており、一見強面で近寄りがたい印象がありました。しかし、話をするとまったく正反対で、物腰は柔らかく、気を遣ってくれる優しい方で、いつもニコニコとしている話し好きの気さくな紳士でした。
生徒たちを指導するときは、技術的な説明は少しだけで、一人一人の作品を見守りながら、皆に「うん。良いじゃない」と褒めていました。それは、これまで人に褒められる経験の少ない少年たちにとって、絵を学ぶ以上に貴重な経験になったと思います。
そして、「点を重ねれば線になる。線を重ねれば面になる。人生と一緒なんだよ」と、少年たちを指導する姿は、絵画を教えるというよりも、人生そのものを指導してくれている授業でした。それはまさに、少年院の矯正教育に通ずるものです。しかも、「教えてやる」という上から目線ではなく、少年たちの目線になって、これからの人生に何が大事かを、絵画を通して静かに教えてくださいました。
今回の受賞では、「妻がいたから今の自分がある。一番それを伝えたい」と、奥さまへの感謝の言葉を涙ながらに話されたときのことが忘れられません。このように、感謝の気持ちを伝えることの大切さを教えていただくなど、私たち職員も少年たちと同じように、先生の生き方から多くを学びました。
帯広少年院は閉庁しましたが、先生から学んだことを糧に、私たちはこれからも尽力してまいります。30年以上にわたり、ご指導いただきありがとうございました。
(肩書は在任中のものです)

受賞コメント
選考委員長コメント