CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2021年度受賞

谷岡 哲次さん

レット症候群支援機構の存在は、研究者への刺激にも

研究者も勇気づけた行動力と熱い想い

NPO法人「レット症候群支援機構」を設立した谷岡さんは、日本中の研究者、医師、厚生労働省の担当者、国会議員などを直接訪問。患者側から寄付や情報提供で支援することを伝え、信頼関係を築いていった。

その中には、「研究者は患者さん側の声を聞く機会がなく、ともすれば何のために研究をしているのか忘れがちです。でも、こうして直接想いを聞くことが大きなモチベーションになります」など、うれしい言葉ももらえた。

同時に、紗帆さん宛てに励ましの手紙も届くようになった。「手紙をいただいた中には、心臓に疾患のある娘さんの治療のためお金を蓄えていた親御さんが、願い叶わず、その娘さんの想いを託して寄付をしていただいたこともありました。また、紗帆を元気づけるため、障害のある小学生が自分にも何かできることがないかと、折り紙で作ったトトロを箱一杯に入れて送ってくれたことがあり、私自身も励まされました」と紹介する。

大好きなお父さんに微笑みを見せる紗帆さん

2014年から累計1500万円助成

2012年からは、患者家族や支援者、研究者が一堂に会し、研究の成果報告や講演、今後に向けたディスカッションなどを行うシンポジウムがスタート。「治療法については研究者同士で意見が異なることがありますが、病気を治したいというゴールは皆さん一緒です。その想いが真剣だからこそ議論も白熱するので、私はそれがいいと思っています」と話す谷岡さん。以後、毎年開催し、2017年には5カ国の研究者を招き、400人もが参加した国際シンポジウムを開催している。

また、新聞で紹介されたことをきっかけに、テレビなどのメディアに取り上げられる機会や、講演会での啓発活動も増えていった。それらが後押しとなり、レット症候群支援機構には資金も着実に集まっていった。

「治療法や治療薬の開発に拍車がかかってほしい。その為には一回の寄付で終わるのではなく、継続的に研究者に寄付を行いたい」。そう考えた谷岡さんは、色々な人から助言をもらい、レット症候群支援機構が主催者となって研究事業の公募を行い、資金助成する仕組みを作った。2014年、公募したレット症候群の研究者に対する助成が初めて実施され、以来、今年3月の第8回「2022年度レット症候群研究費助成事業」まで、累計で約1,500万円の助成を行っている。

患者団体が医者を金銭的に支援するという日本で例のない団体となった

レット症候群の完治に向け心を一つに

患者同士がよりつながりやすいアプリ「レッコミ」を作成し一歩ずつ治療の道が拓けるように進んでいく

さらに2021年からは、患者やその家族が情報を共有できる無料の専用アプリ「レッコミ」を公開。「掲示板での質問や、チャットなどもでき、また自分の住む地域の登録者がわかるので、家族同士で直接会って情報交換したり交流したりすることも可能です」と谷岡さん。そして何より、患者が登録した病気の情報をデータベース化して研究者や製薬会社に提供することで、治療法や治療薬の開発に役立つことが期待できるのである。現在、約230名が登録しており、今後は500名にするのが目標だ。

レット症候群支援機構の設立から11年。これまで積み上げてきた患者同士や研究者とのつながりという「点」を、治療という「線」につなげる活動をしていきたいという谷岡さん。横のつながりがあまりない研究者同士をつなぎ、研究を加速させるハブになれるのは唯一患者団体ではないかと話し、「治療法の確立に向け、患者と研究者、製薬会社がオールジャパンで一つになれるよう頑張っていきたい。それが、これまで私たちを支援してくれた方々への恩返しになると思っています」と熱く語る。

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