
しかし、以前から診療を受けている大学病院で「レット症候群ではないでしょうか」と尋ねるも、断定するのはまだ早いという返事。それからは、リハビリから針治療、漢方、マッサージ、民間治療など、大阪はもとより東京にも夫婦交代で毎週通い、約1年にわたりありとあらゆる治療を試みた。
そうした中、レット症候群の研究者の存在を知った谷岡さんは、2010年8月30日、そのうちの一人の医師に会いに九州にある大学病院に向かった。そこで初めて、紗帆さんはレット症候群であると診断されたのである。「心のどこかで覚悟はできていたので、不思議と心がスッキリしたのを覚えています」と谷岡さん。同時に、「親として、何が何でもこの難病に立ち向かいたい」という思いがこみ上げてきたという。矢継ぎ早に質問する谷岡さんに、医師は、研究がまだ基礎段階で膨大な費用がかかること、海外では患者団体が募金を集めて研究支援をしていることなどを話してくれた。
帰りの新幹線、谷岡さんの頭の中では一つの想いが大きく膨らんでいた。「NPO法人を設立し、患者側から研究者を支援してはどうか」という想いだ。その時のことを谷岡さんは、「自分の今までの経験から、時間が経つにつれその熱が次第に冷めていくのが怖かった。半ば強引にでも一気に進めなければダメだと思った」と振り返る。