CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2019年度受賞

矢田 明子さん

人とのつながりの中で
まちを元気に!健康に!

父の死をきっかけに 子育てしながら看護の道へ

病院の中ではなく、暮らしのそばで気軽に健康相談ができたり、日常的に人々とつながって、まちを元気にする“おせっかい”焼きの看護師。そんな「コミュニティナース」を10年以上前から実践し、その普及と人材育成にも奮闘しているのが、島根県出雲市出身の矢田明子さんだ。

矢田さんが看護師を志したのは、3人の子育てをしていた26歳のとき。最愛の父が末期がんで入院し、わずか数カ月のうちに帰らぬ人となったことがきっかけだった。入院中、父が最期まで信頼していたのが、症状の変化から先を予測し、関わりで父を安心させてくれていた看護師たち。自分もそういうことができれば、人々が病気になる前から役に立てるのではないかと思ったのである。

それからは、3人の子育てをしながら猛勉強を重ね2008年に27歳で島根県立大学短期大学部看護学科(当時)に合格。そこで入学早々に出合ったのが、「コミュニティナーシング」という考え方だった。それは、地域で人々の暮らしに溶け込み、健康なときから支援していくというもので、まさに、がんが進行してから見つかった父の無念を思う矢田さんの心に強く響くものであった。

看護学科に入学早々「コミュニティナーシング」という考えと出合い、仲間5人とグループを結成

仲間とコミュニティナース活動を始め、手応えを実感!

矢田さんが「コミュニティナーシング」について調べてみると、そうした考えを実践するような活動は当時の日本ではほとんど見られず、「それなら、私がやってみよう」と、看護学科の仲間5人でグループを結成。まだ看護師資格がないため、「コミュニティナース 見習い中」の名刺をつくり活動を始めたのである。

看護を学びながらまちの中で活動を始めてみると、前例がない活動だけに、「私たち看護の勉強をしています。何か気になっていることはありませんか」と話しかけても、当初は怪訝な目で見られることも少なくなかった。

それでも、病院の外でも使える看護の知識は多く「コミュニティナーシングはどこでもできる」ことを実感。自分の健康は後回しになりがちな子育て中の主婦を対象に、出雲市内のカフェで開催したイベントでは、回を重ねるうちに、実際にがん検診を受けて早期発見につながった例も出るなど、健康に対する意識の変化を促すことにも手応えを感じることができた。そうした中、少しずつ地域で応援してくれる人も現れ、グループのメンバーに加わる仲間も増えていった。

主婦を対象とした活動では、がん検診で早期発見につながった例も

幅広い学びで視野を広げ、コミュニティナースの活動を本格化

2011年、大学3年生のとき、今後のコミュニティナース活動のヒントになるかもしれないと、矢田さんは出雲市に隣接する雲南市が主催する、起業や地域活性化などの実現を目指す次世代育成事業「幸雲南塾」に参加。ここで矢田さんは、年齢や障がいの有無などにかかわらず皆が一緒に畑仕事に取り組むコミュニティづくりプランで高い評価を得た。さらに、農業や教育など幅広いジャンルの同期生から刺激を受け、「もっと自分の視野を広げたい」と思うようになった。

そうして翌年に看護師免許を取得すると、島根大学医学部看護学科へ編入。大学では、看護学以外にも社会学や文化人類学など幅広い分野を学び、経済や人の行動などへ理解を深めるようになった。これが、さまざまな職業や年代の人と触れ合う機会を増やし、まちの皆さんが健康なうちから寄り添うヒントとなったのである。

2014年には、雲南市との協議の末「幸雲南塾」の活動を支援する「NPO法人おっちラボ」を設立し、人材育成や組織づくりを経験。その後、保健師の免許を取得し大学を卒業すると、まちを元気にするコミュニティナースの活動を本格化させていった。

魚屋さんで働くなど、まちに溶け込んでコミュニティナースを実践
人材育成や組織づくりで貴重な経験を得た「おっちラボ」
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