CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2019年度受賞

尻別川の未来を考える オビラメの会

尻別川に再び命の賑わいを!
イトウを愛し守り続ける

「尻別イトウ」絶滅の危機に、立ち上がった釣り人たち

数ある北海道の水系の中でも、とりわけ巨体を誇る尻別川のイトウ。アイヌ語に由来して「オビラメ」とも呼ばれ、特別な魚として多くの釣り人を魅了してきた。

「イトウが尻別川からいなくなっている!」。いち早く異変に気付いたのは、尻別川とイトウを見続けてきた釣り人たちだった。1980~90年代の河川改修工事などによる環境の変化で、イトウは生息場所を失い急激に減少していたのだ。危機感を強くした地元の釣り人たちは、1996年、イトウ釣りの名人で“レジェンド”といわれる故・草島清作さんを中心に、「尻別川の未来を考えるオビラメの会」を結成したのである。

設立前年の1995年から2001年にかけては、北海道立水産ふ化場の研究職員である川村洋司さん(現・オビラメの会事務局長)の協力を得ながら、イトウの生息状況を調査。繁殖期に合わせ、尻別川の50カ所以上で自然繁殖の痕跡などを調べた。イトウの「産卵床(親魚が卵を産みつける場所)」には特徴があり、見つけるのが容易なのだが、見つかったのは10㎝あまりの幼魚が1尾のみで、絶滅の危機にひんしていることがわかったのである。

婚姻色で真っ赤になった雄イトウ(撮影・足立聡氏)

再導入を目指し「オビラメ復活30年計画」を始動!

再導入に向け、イトウの生息に適した環境を探索

オビラメの会では、5年にわたる調査で尻別川のイトウが絶滅の危機にあることがわかったことから、生息環境の保護による復活を断念。人工ふ化させて稚魚を放流し、もともと生息していた場所に再び定着させる「再導入」を目指すしかないとの判断に至った。

ここで重要なのが、復活を目指したのは、単なるイトウではなく「尻別川のイトウ」であること。放流するのは、尻別川で捕獲した野生のイトウから採卵・授精して人工ふ化させた、「尻別川固有の遺伝子を持つイトウの稚魚」でなければならないのだ。

さらに、イトウは一生に何度も産卵するが、受精卵の生存率が比較的低く、しかも成熟には4、5年から10年近くかかり世代交代に長期間を要する。このため、会では尻別イトウの再導入に挑むにあたり、「オビラメ復活30年計画」を2000年に策定。10年ごとの3つのステージに分け、第1ステージは稚魚の生産と再導入場所の選定、第2ステージは再導入によるイトウ繁殖拠点の再生、第3ステージは拠点を全流域に広げることを目標とした。

大きく変化した尻別川の環境(制作協力・柳井清治氏)

産卵を待ち続けた5年目の春、悲願の人工授精に成功

30年計画に先立つ1998年、オビラメの会は、人工ふ化放流による「尻別イトウ」の再導入に向け、捕獲した野生イトウの飼育を倶知安(くっちゃん)町の飼育池でスタート。2001年には、人工ふ化させた稚魚の放流場所を探すため、尻別川の支流を一本ずつチェックする「尻別川総点検」を始動させている。

しかし、最初の難関である、尻別イトウによる採卵・授精はなかなか実現せず数年が経過した。そうしてイトウの産卵期である春を5シーズン見送った2003年5月、ついにその時がやってきた。

地元の釣り人から会に連絡が入り、産卵直前とみられる超大型の雌イトウを釣り上げ、自宅の水槽でお腹から卵が漏れ始めているというのだ。会のメンバーはすぐに現場に駆けつけ3人がかりで採卵。飼育池の雄イトウの精子を使い悲願の人工授精に成功したのである。その後、この雌イトウは飼育池に移されて翌年も抱卵し、オビラメの会は2年連続で人工授精に成功。その年の9月、尻別川支流の倶登山川(くとさんがわ)で、ヒレの一部を切除して標識にした稚魚の放流を達成したのである。

採卵のため巨大なイトウを抱える川村事務局長
人工授精でふ化したばかりのイトウの稚魚、体長2cm  (撮影・鈴木芳房氏)
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