CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2017年度受賞

角居 勝彦さん

多くの引退馬が新たな道を歩み始めている

一頭でも多くの引退馬を救い、セカンドキャリアを支援したい!

「サンクスホースデイズ」は、成功の一方で新たな課題も明らかになった。「馬主さんなどからの寄付がイベント費用で一瞬にして消えてしまい、今後継続するには、きちんと組織立った活動にしなければならないと痛感しました」

こうして2013年12月、一頭でも多くの引退馬を救い、セカンドキャリアを支援するため、一般財団法人「ホースコミュニティ」を立ち上げたのだ。同時に、事務局のスタッフが日本全国で行われているホースセラピーや障がい者乗馬などを見て回って仕組みづくりを進め、2016年には引退馬をセカンドキャリアにつなげる「サンクスホースプロジェクト」が始動したのである。

プロジェクトでまず重要なのが、速く走ることや闘争心を教え込まれた競走馬を、乗馬やセラピー用に再生するリトレーニング(再調教)だ。これには人件費や治療費、飼料代がかかり、引退馬を引き受ける乗馬クラブの負担となっていた。そんな中、趣旨に賛同してくれた岡山乗馬倶楽部(岡山県吉備中央町)が引退馬を受け入れ、リトレーニングしてくれたことで、活動が軌道に乗っていったのである。

リトレーニング(再調教)の様子

引退馬支援の輪が広がる「サンクスホースプロジェクト」

引退馬のセカンドキャリアを支援する「サンクスホースプロジェクト」では、費用面で支援してくれる競馬ファンや乗馬ファンの存在も大きい。「人気のあった競走馬には多くのファンがついていて、引退後も皆さんが応援してくれるのです」と角居さんが話す通り、ファンクラブの会費や「一口馬主」の出資金などによる支援のほか、ふるさと納税を活用した支援も活動を支えている。

こうして競走馬から乗用馬に生まれ変わった馬との再会は感慨深く、角居さんは「うちの厩舎で大暴れしていたおまえが、頑張って小さな子どもを乗せて歩けるようになったんだなあ」と、思わず見とれてしまうという。

2011年に始まった「サンクスホースデイズ」も、2018年3月の名古屋競馬場での開催で18回目を迎えた。乗馬体験をした人の中には、子どもが交通事故に遭ってから高い所に恐怖を感じるようになっていたが、馬に乗ることで怖さがだんだんなくなり、今では楽しみにしているという家族の声も聞かれた。

角居さんは、「馬と触れ合ったり乗馬体験をしたりして、障がいのある方や子どもたちが笑顔になるのを見るのが、自分の一番のエネルギー」と話し、「休みを返上してでもそうした場所に行くと、元気をもらって帰ってきます」と笑みがこぼれる。

馬への感謝の気持ちを込め、人と馬が幸せになる社会へ

馬との触れ合いは心身のリハビリ効果に大きな期待を集めている

引退馬のセカンドキャリア支援とともに、本来やさしい動物である馬に付いてしまった攻撃的なイメージも払拭したいと話す角居さん。「馬はパートナーとしての関係を築かないと、一緒に歩いてくれない動物。望むことをしてあげると、こちらが望むことも一生懸命やろうとしてくれます。落ち込んだり寂しそうにしていれば寄ってきてくれるんです。言葉を交わさなくても心で通じ合えるから、コミュニケーションを取るのが苦手な不登校の子どもたちなども馬に癒やされるのです」と話す。

2018年5月時点で「サンクスホースプロジェクト」による引退馬支援は70頭を超え、その後も毎月増え続けている。北海道浦河町では障がいのある人たちと共に、障がい者乗馬の馬を育成する計画も進展するなど、活動は広がりを見せている。

今後に向けては、馬のこともセラピーやリハビリのことも分かる人材を育てることが急務だという角居さん。「調教師としてたくさんの試練もありましたが、馬のおかげで今の自分があります。そうしたすべてに感謝の気持ちを持って、人と馬が幸せになる社会を作っていきたいです」と想いを語る。

角居さんは、「馬と触れ合った人たちの笑顔が、自分の一番のエネルギー」と話す
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