CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2015年度受賞

特定非営利活動法人 Japan Hair Donation & Charity

送られてきた髪の仕分けをする渡辺さんと延岡さん

数えきれないドナーの想いが込められた、世界に一つだけの「OneWig」

ドナーから届けられるときには一人ずつ分かれている髪も、ウィッグ製作に使うための処理段階ではすべてが一緒になる。「ですから、1つのウィッグには、数えきれないドナーの想いが凝縮されているんです」と渡辺さんは話す。

そうしてできるフルオーダーメードのウィッグを、JHDACでは「世界に一つだけ」という意味を込めて「OneWig」と呼んでいる。希望者のもとに行って頭を採寸し、一つひとつ手づくりする製作会社に発注し、約1カ月後に出来上がったウィッグは、子どもたちの希望する長さやスタイルに仕上げられる。

JHDACのウィッグは申し込みをした順に子どもたちに提供され、現在まで100人近くに届けられた。そのなかには、1年近く待ち、ウィッグを作るための採寸を病床で受けた1週間後に亡くなった女の子もいた。「同世代の子に比べたら、病気のためできなかったことが山ほどあったと思います。でもその子は、お母さんと一緒にいられた時間が、ほかの誰よりも多かったんじゃないかなと。そんなことも考えたりします」。渡辺さんはそう話す。

毎日贈られてくるドナーからの髪の束

誰もがヘアドネーションを、「ハブ」として自然体で支える

JHDACの活動は、ドナー、賛同美容室、ウィッグ製作会社、ウィッグ希望者など、多くの人々をつなぐ「ハブ」の役割を果たしながら広がりを見せている。

万福さんは、「そのなかで、私たちは本業の美容師をやりながら、自分たちにできることをしているだけなのです」と話す。延岡さんも、「私は髪を贈りたいという人のカットをし、皆さんのおかげでできたウィッグをカットしているだけなのです」と話す。

渡辺さんは言う。「髪が抜けてしまった子を見て、その子が特別だと思ったことは一度もありません。なぜなら、本人のせいではありませんから。私たちは、普通の子に普通に接しているだけなんです」。そして相談に来た家族には、いつも、子どもの前で泣いたりしないようにと話す。「その涙は、さらに子どもを傷つけることになります」

そんな自然体のJHDACのメンバーだが、順番の来た子どものウィッグが出来上がれば、自分の休日もいとわず九州や沖縄などの遠方までウィッグを届け、希望を聞きながらカットを行っている。

(左)技術を要するウィッグのカットだが、延岡さんは「私はご希望に沿ってお切りしているだけです」と自然体だ
(右)自分たちの活動について語る万福さん

いつかウィッグの必要のない社会が来ることを信じて

仕事の合間に、ドナーや美容室とコンタクトをとる渡辺さん

切り過ぎたら伸びてこないウィッグのカットやフィッティングは非常に難しく、活動が広がる一方で、対応できる美容師は現在国内に10人ほどしかいない。そのため、渡辺さんは限られた個々の力に依存しない組織化と、ウィッグに対応できる美容師育成の必要性を考え、取り組みを始めている。そうすることが、現在も100人以上いるウィッグ提供希望の子どもたちの、待ち時間短縮につながるからだ。

JHDACには、「私の髪がどれだけ使えるか分かりませんが、少しでも役に立てばうれしいです」と添えられたドナーからの手紙や、「どんなに感謝の気持ちを伝えても、足りないくらいです」といったウィッグを提供された子どもたちからのお礼が数多く届いている。

こうした声を受けながら、メンバーはドナーの善意と勇気から生まれたウィッグを一人でも多くの子どもたちに届けたいと、活動を続けている。そして、「髪がないことに偏見を持たれず、ウィッグが必要のない世の中が来ることに、少しでも貢献できれば」と、未来を見つめる。

ドナーの願いが込められたメッセージ
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