CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2013年度受賞

チャイルズエンジェル

「ほら、キリンさんは、みんなが連れてきたんだよ!」

「ほら、キリンさんは、
みんなが連れてきたんだよ!」

子どもたちの夢をかなえ、命の尊さを伝えたい!

「どうして、動物園にキリンがいないの?」。きっかけは、子どものそんなひと言だった。

釧路市動物園では2008年にゾウのナナ、翌年にキリンのキリコと、子どもたちに人気の動物が相次いで亡くなった。

ある日、主婦の佐藤さんが友人とのお茶の席で、寂しくなった動物園の話をすると、皆がかつて子どもたちを動物園に連れて行って喜ばせたことに想いを馳せ、「それなら、私たちがお金を出し合ってキリンを寄贈しましょうよ」と思い立ったのである。

さっそく、釧路市動物園の山口園長(当時)に相談すると、聞かされたのは想像もしなかったキリン購入の難しさだった。「国内では繁殖のために貸し借りするのが主で、キリンのいない釧路には来る可能性がほとんどありません。仮に海外から購入するにしても、雄雌合わせて4000万円以上します」。そして園長は最後にこう付け加えた。「動物の売買は命のやりとりです。その命の尊さを知っていただくのが、動物園の使命なのです」。

園長の言葉に、皆の心の中では「子どもたちの夢をかなえ、命の尊さを伝えるためにも絶対キリンを贈らなきゃ」という想いがいっそう強くなっていた。

(写真左)亡くなったキリコの献花台(写真右)1978年頃の釧路市動物園

夢を信じて走り出した、「子どもたちのエンジェル」たち

募金に大きく役立った木島さんのポスター

子どもたちのため、キリンを購入したいという想いはいっそう強くなったが、雄雌合わせて4000万円以上という金額はあまりにも高額だった。やがて、皆の想いはひとつの結論に達したのである。「募金を集めたらどう? 子どもたちのための『キリン募金』。きっと釧路中が協力してくれるんじゃない」。

こうして、坂本さんを代表に、キリンを寄贈するための地元主婦20人による市民団体「チャイルズエンジェル」が誕生したのである。

チャイルズエンジェルは、「募金の目標金額は5000万円、活動期間は2013年3月末まで」と決め、活動の準備に取り掛かった。募金を呼び掛けるポスターは、地元のデザイナー木島さんがボランティアで制作してくれた。また、札幌国税局に申請し、企業なども募金しやすいよう寄付金控除の対象団体にもなったのである。

こうして2012年5月、子どもたちにキリンを贈るという夢に向かって募金活動がスタートしたのである。いざ始まってみると、市民からの反響と協力は予想をはるかに超えるものだった。

募金開始を発表したエンジェルたち

活動が広がる一方、進まぬキリン購入交渉に焦りも

反響はすぐに表れた。チャイルズエンジェルの事務局の電話は募金への問い合わせや激励で鳴り続け、活動は市民、企業、学校など、子どもから大人まで大きなうねりとなって釧路中に広がっていったのである。

「キリン募金に、ご協力お願いしまーす!」。はじめは声が出なかったエンジェルたちも、街頭やイベントで募金活動を重ねるごとに、どんどん声が大きくなっていった。そして、キリンが来る日を夢見てお小遣いを募金する子どもたちの姿に、エンジェルたち自身も感動と勇気をもらったのである。

しかしその一方では、訪ねた会社の経営者から「こっちが寄付をもらいたいよ」と断られることもあり、企業に寄付をお願いする大変さも身をもって感じた。しかし、キリンが来て釧路に活気が増せばその社長も喜んでくれるだろうと、気持ちを入れ替えて頑張った。

こうして、わずか5カ月の間に募金は3000万円を突破。しかし、動物商を介してアメリカのサンディエゴ動物園からキリンを購入する話が一向に進まず、焦りも募っていた。そこで、札幌の米国総領事館を訪ね、大使館を介してサンディエゴ動物園と直接交渉。これが、事態を大きく好転させる契機となった。

小学校の児童や幼稚園児たちも、かわいい声でキリン募金を呼び掛けた
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