笹原さんの行う遺体の復元は、長年培った技術を使い、損傷した部分を一つひとつ元に戻していく。きれいな状態を「つくる」のではなく、その人本来の姿に「戻す」のである。
納棺師になる前、笹原さんは北海道の病院に勤め、末期医療の現場も目にしてきた。そうした医療の世界では、亡くなった方が苦しそうな表情をしていても、そのまま見送ることが少なくなかった。亡くなった方の最後の姿を、本人にも遺族にもいい思い出にしたいと、笹原さんは納棺師の世界に入ったのである。
納棺を行うなかで、笹原さんは、納棺師がすべて行うのではなく、遺族も参加するのが本当の納棺ではないかと思うようになった。そうして立ち上げたのが「参加型納棺」を行う会社「桜」である。そして、遺族に亡くなった方の顔や手に触れたりして見送ってもらうため、事故や病気などで損傷の激しい遺体を生前の状態や表情に戻すことにこだわって、苦労を重ね復元の技術を身につけてきた。