CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2010年度受賞

吉岡 諒人さん

“なんだろう?”を見逃さず自分の目で真実を探る

“なんだろう?”を見逃さず
自分の目で真実を探る

フィリピンで生き物を追いかけ帰国後は、自然豊かな袖ヶ浦へ

「おしゃぶりをしている頃から、虫を目で追い、指で追っていました」とお母さんが話すほど、物心つく前から生き物に興味を示していた吉岡諒人くん。2歳半の時、お父さんの仕事の関係で、家族と共にフィリピンに移り住んだ。常夏のフィリピンは、カブトムシやトカゲ、ヤモリなどたくさんの生き物が1年中いて、諒人くんは楽しい日々を過ごした。

ある時、家族旅行で訪れたリゾート地で、諒人くんは砂地に幾つもの穴があいているのを見つけた。「穴の中の生き物はアリジゴクでしたが、手に取ってみると小さい。なので帰国後に日本で見たアリジゴクは大きく感じました」と、当時を振り返る。

諒人くんが小学1年生の時、一家は4年ぶりに帰国。千葉の幕張で新生活が始まった。幕張は近代的できれいな街だったが、両親は自然に慣れ親しんだ諒人くんに向いていないのではという思いを強くした。諒人くんが小学2年生の終わり、一家は自然がより豊かな袖ヶ浦市へ引っ越した。

小学4年生の自由研究テーマに謎の多いアリジゴクを選択

(左)近所や通学路には生き物がたくさんいて、つい寄り道を…(右)フィリピン時代。お兄ちゃんと一緒に

袖ヶ浦市の新しい家から小学校までは緑豊かな森があり、トカゲやカマキリなどたくさんの生き物が見られた。アオダイショウを捕まえ、飼ったこともある。

「学校からまっすぐ帰ってこないどころか、ちゃんと登校しないし、もう何度探しに行ったことか」とお母さんは笑う。

毎年、夏休みには自由研究をしたが、4年生の夏休みを前に、諒人くんはある考えを持っていた。「それまでは観察記録ばかりだったので、今度はファーブルみたいに仮説を立てて実験したいと思ったんです。実験するには同じ生き物がたくさん必要なので、前にフィリピンで見て面白かったことや、謎が多いことからアリジゴクを選びました」

実験に使うアリジゴクは、近所の神社などでたくさん捕れた。調べたのは、巣の作り方や、アリ以外の餌についてなどで、1カ月実験・観察を続けた。そうした観察の中に、諒人くんがどうしても確かめたいことがあった。

袖ヶ浦の自宅近くの森で生き物を探す諒人さん

旺盛な探究心と実験・観察で見事に、アリジゴクの通説を覆す!

夏休みも終盤になろうとしていたが、諒人くんは、「アリジゴクも、きっとおしっこをするはずだ」という自分の仮説をどうすれば確かめられるか考えていた。ウスバカゲロウ科の幼虫で、幼虫期は肛門がほぼ閉じているアリジゴクは、羽化時まで排泄しないというのが通説だった。

しかし、その瞬間は、写真を撮ろうと白い紙の上に置いた時に訪れた。アリジゴクのお尻の辺りから黄色い液体がぷくっと出てきて紙に広がったのである。諒人くんは、改めて図書館の専門書を調べたり、インターネットの質問サイトなどに投稿したが納得いく答えは得られない。それならば、自分の目で確かめよう。諒人くんが、どのアリジゴクが排泄したか分かるよう1匹ずつ入れ物を分けて実験を続けると、10匹中のうち4匹が黄色い液体を出し、お尻が濡れているのも確かめた。

この自由研究をまとめたレポートは、日本昆虫協会の「夏休み昆虫研究大賞」の「大賞」に選ばれた。通説にとらわれない探究心と、自分で確かめる姿勢が新発見につながったのである。

最初におしっこを見つけたときの写真と、研究をまとめたレポート
大発見のきっかけとその時の様子を話す諒人さん
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