CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2009年度受賞

茂 幸雄さん

  • 真正面から自殺防止に
    取り組んでいます

    NPO法人「心に響く文集・編集局」
    事務局長 川越みさ子さん

私は以前、福井県警本部内の喫茶部で店長をしていました。そうしたおり、茂さんから「自殺防止マニュアル」用の文集をつくりたい。体験を書いてくれないかと頼まれたのです。私は中学2年の1月に父親が、同じ年の10月に母親が自殺するという経験を持っています。ともに第一発見者でした。父親は頑固者で、母親を殴ったりするような人だったので、あるとき喧嘩した私は「あんたなんか、死んでしまえ」と言ってしまったのです。その翌朝、父は納屋で首を括って自死し、母親は父の死を苦にして鬱状態に陥り、9ヶ月後農薬を飲んで死んだのです。

私は長い間、そのことを誰にも話したことがありませんでした。しかしいつも、何であんなことを父親に言ってしまったのか、もっと優しくできなかったのか、なぜ母親の苦しみを理解して、自殺に追い込まれないよう守ってやれなかったのかと、40年余り煩悶し続けてきました。このうなされるような苦しみを墓場まで持って行くことになるのかと観念していたところに、茂さんから話があったのです。

自殺しようという方に、残された者はどうなるんですか。身近にいる何人もの方が、私のように例えようもない苦しみにさいなまれるんですよ。そう強く語りかけ、押しとどめなければいけないと考え、私は自分の体験を綴ったのです。それだけでなく、年金の受給資格を満たすと、3ヶ月目にこのNPOを手伝うために「おろしもちの店」へ来たのです。

茂さんはいつも真剣で、ぶれない人です。そのことを知っていましたから、私も真正面から自殺防止に取り組もうと考えたのです。両親のことを話したりするなかで、保護された人が心を翻し、だんだん元気になっていくと、私も元気になっていきます。両親の死も社会の役に立っているのだと思うと、心にのしかかっていた重荷も軽くなるような気がします。

死にたいと思ってここへやって来る人は、私たちが心許せる人か、同じ高さの目線の人なのかを鋭く見抜きます。茂さんはまさにそうした人ですし、私も体験を話すことで一緒に頑張っていきたいと考えています。

受賞コメント

自殺多発場所で、大勢の人が人生の岐路に立って救助の手を待ち望んでいる姿に接し、今日まで無我夢中になって声かけを行い、200人以上の方に人生再出発のお手伝いをしてきたことが認められ、今回「シチズン賞」を頂くことになり、感激の極みでございます。今回の受賞を励みに、この輪をもっともっと広めていきたいと思っています。

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