CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2009年度受賞

茂 幸雄さん

ボランティア参加者とともにパトロールを継続

自殺を考える人を思い止まらせたいと、「心に響く文集・編集局」を設立

人間の命が自治体の予算不足のせいで疎かにされていると知り、茂さんは衝撃を受けた。そこで自殺を考える人を思い止まらせるマニュアルを作ろうと、翌年4月、定年を待って「心に響く文集・編集局」という団体を立ち上げ、全国から自殺願望を克服した人たちの経験談を募集、自費出版することにした。この団体はNPO法人化され、茂さんの活動母体となる。前後して、茂さんは東尋坊で自殺を防ぐボランティアの募集を始め、通称「東尋坊のちょっと待ておじさん」につながっていく。活動拠点として「心に響く おろしもち」の店を開いたのも、同時期。おろしもちは、大根おろしに搗きたての餅を入れた素朴な食べ物だ。古来、餅つきは家族のきずなづくりや近所づきあいに役立ってきた。その餅で傷ついた人たちの心を何とか救えればと考えてのことだった。

茂さんが「心に響く おろしもち」で販売するおろしもち

仲間・支援者とともに、精力的な活動を続ける

全国各地で、自殺防止を訴える講演をしている茂さん

「一年持たないかも」と思った運動だが、2010年12月時点で、NPOの自殺防止ボランティアは90名近くにまで増えている。このうち20名が東尋坊の海岸線をパトロールし、自殺を企図しているのではないかと声をかけ、そうであれば考え直すよう説得する。昨10年中に74人を保護、累計300人の命を瀬戸際から救出した。つれて東尋坊の自殺者は年々減り、08年は15人、09年は14人に止まっている。

茂さんによると「自殺しようとする人は、不況を映して経済的に行き詰った人が多く、また職場でのイジメやパワハラに遭った人も少なくない。生活が壊れ、心が壊れた人を救うには、一時的な保護では問題を解決できません」という。このため福井市内にシェルター(避難所)用の部屋を借りているだけでなく、各地に支援者を得てシェルターを設ける一方、負債の整理や再就職の斡旋、働く環境の整備など、事細かな支援を続けている。自殺防止を訴える講演会にも積極的に参加している。

「それにしても」と、朴訥な風貌をした茂さんは怒る。「行政は困っている人をたらいまわしにするだけで、例えば東尋坊に自殺防止用の柵を設けることさえしない。夜間の監視カメラの設置だって同様です。どうしてなのでしょうか」

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