
出水平野は古くからツルの越冬地として知られてきた。だが戦前の1939(昭和14)年に現在の荘地区荒崎の田んぼを中心に3,908羽を数えた渡来数は、戦争が終わった1947年には275羽まで激減していた。それが1952年に地域全体が「ツルとその渡来地」として国の特別天然記念物に指定され、前後して荘地区の人たちの熱心な保護活動が始まったことから、渡来数は次第に増加していった。地区の人たちはツルの安全を確保するためにねぐらに水をはり、近接した餌場にはいわしや小麦などを撒いた。努力が実り1997(平成9)年度には1万羽を突破、以来、2009年度まで13季連続して1万羽を超える「万羽ヅル」を記録、今では世界一のツルの渡来地となっている。もっとも鳥インフルエンザなどの問題もあり、最近では逆に渡来地の分散化を図るべきではないかとの意見も強まっている。
現在、シベリア方面から出水にやってくるツルはナベヅル、マナヅルが圧倒的に多く、他にクロヅル、ナベクロヅル、アネハヅル、ソデグロヅル、カナダヅルで、釧路湿原などで見られるタンチョウは気温の関係でほとんど姿を見せない。