CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2008年度受賞

川崎個人タクシー協同組合

忙しい仕事の合間を縫って、無償の「タクシードライブ」を30数年

忙しい仕事の合間を縫って、
無償の「タクシードライブ」を30数年

取材・文:清丸恵三郎

「長くお世話になる地域に、何か恩返しをしたい」

1人の個人タクシーの運転手と障がいのある子どもとの出会いが、今日まで30数年にわたって続いている「タクシードライブ」という名のボランティア活動へとつながった。

話は1976年にまでさかのぼる。前年に川崎市個人タクシー協同組合に加入した遠藤真吉さんは、同期で仲良しの鈴木廣治さん(故人)から、ある相談を持ちかけられた。

「先日、知的障がいのあるお子さんを乗せたんだよ。むずがったりして、家族でもドライブに連れて行くのはなかなか難しいらしい。だから子どもさんは車に乗ってとても喜んでいたよ。そこで相談だけれども、あなたはよくわれわれに、川崎市でこれから長くお世話になるんだから、何か恩返しをしたいものだと言っているが、どうだろう、障がいある子どもたちを、年に1回でいいからボランティアでドライブに連れて行ってあげるというのは」

遠藤さんは即答した。「それはいいね。是非やりましょうよ」
「じゃ、うちのそばに市がやっている『しいのき学園』という知的障がい児の施設があるんですが、一度行って、園長さんと相談してきませんか」

ドライブの贈りものに、子どもたちの笑顔がはじける

数日後、2人は学園に出向き、趣旨を説明した。学校側は大いに歓迎だったが、現実的には制約条件が少なからずあり、即実行とはいかなかった。障がいの重い子をどうするか。学園は土日休みだから平日でないと行けないのだが、そうなると小中学校などへ通っている子どもを休ませないといけない。前もっての準備や連絡の問題もあり、雨降りだからといって延期できない。行く先は、雨天でも子どもたちが遊べる場所でないといけないなどである。

結局、トライアルしてみましょうということになり、当初は親しい運転手数人で実験的に始めた。奥さんを動員してお菓子の詰め合わせなどもこしらえたりした。普段、学園近辺にしか出かけられない子どもたちは、とても喜んでくれた。

手ごたえをつかんだ鈴木さんたちは、できれば遠出が可能な子どもたち全員を連れて行きたいと思い、78年末ごろから仲間に声をかけ始めた。こうして有志が集まり「しいのき学園奉仕団実行委員会」が作られる。一方で組合に働きかけ、資金援助を要請すると同時に、組合本部などに募金箱を置かせてもらった。この時点で、ボランティアはボランティアだが、奉仕団の活動を組合全体が支援する形になったと言っていいだろう。

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