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2007年度受賞

JR香椎線・西戸崎駅で社内清掃を続ける高校生有志

「電車をきれいにしたい」。高校生が下校時ごとに電車内を清掃

「電車をきれいにしたい」。
高校生が下校時ごとに電車内を清掃

取材・文/清丸恵三郎

香椎線・西戸崎駅で8分間の車内清掃

数年前の話になる。JR九州(九州旅客鉄道)香椎線の終着、西戸崎駅では、夕方から20時過ぎまでだが、列車が到着すると制服姿の数人の高校生が座席の上に散らばった紙くずや、窓際に置かれたままの空き缶などを手早くかたづける姿が見られた。

折り返しまでの8分間を利用しての作業が終わると、何事もなかったように、ある生徒は徒歩で、ある生徒は自転車で、そしてある生徒はバスで、駅周辺やその先の志賀島にある自宅へと帰っていく。

JR九州は、鉄道ファンの間では新型車両導入に積極的な会社として知られる。九州新幹線「さくら」をはじめ、在来線特急の「ゆふいんの森」「くまがわ」などなど。しかし、鹿児島本線香椎駅を中間に西戸崎駅から宇美駅までを結ぶこの香椎線は、福岡市内・近郊を走るが、いかにもひなびたローカル線といった感じで、2両編成の車両も幹線でお役ごめんとなった古い型のものが多い。沿線は都市化が進む一方、名勝「海の中道」を走ることからリゾートマンションも散見するが、車両の更新が進んでいるようには見えない。

朝夕は通勤・通学客で混み合うものの、車両がそういう具合だからか、必ずしも乗客のあいだでマナーが徹底しているとは言えないようだ。ワンマン運転だから、乗務員の眼も行き届きづらい。終着駅の西戸崎駅まで来ると、車内には新聞やゴミ、空き缶などがそこここに散らばっているといった具合だ。

一人の活動が、やがて大きな人の輪に

「自分たちが利用している列車がとても汚れている。これじゃかわいそう」

7、8年も前のことになる。1人の女子高校生が、車掌さんを手伝い車内清掃を始めた。松田知代さんだ。今は久留米市内に住んで、病院の医療事務の仕事をしているが、実家は金印(「漢委那国王印」)が出土したことで知られる志賀島にある。

自分も高校に入ったら同じように車内をきれいにしようと思うようになったのが、3つ年下で、当時中学生だった妹の静香さんだ。たまたま帰宅が遅くなった知代さんを迎えに行き、友人と黙々とゴミを拾う姿を見て、感銘したのである。

05年4月、知代さんと入れ替わるように高校に入学した静香さんは、中学以来続けている剣道に日々打ち込むとともに、部活が終わって夜8時過ぎに西戸崎駅に帰り着くと、「おねいちゃんがやっていたように、ちょこちょことゴミを拾う」活動をするようになった。

そうした松田さんを手伝うようになったのが、志賀中学の剣道部仲間の橋本彩加さん、樋口あずささん、吉田真央さんであり、親友だった一ノ宮由香さん、白坂彩さんだった。

いまは福岡市内で働いている橋本さんは、手伝い始めたときのことをこう振り返る。

「松田さんがやっているのを見て、えらいなと思って一緒に始めた。始めたら習慣になってしまい、途中で止めるのが気持ち悪くなってきて、卒業まで続けたんです」

6人は必ずしも同じ高校ではない。しかし6人の活動は、志賀中学の剣道部の後輩とか、それぞれの高校の後輩なども加わって、多いときには60人あまりの輪に広がった。

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