「自分たちが利用している列車がとても汚れている。これじゃかわいそう」
7、8年も前のことになる。1人の女子高校生が、車掌さんを手伝い車内清掃を始めた。松田知代さんだ。今は久留米市内に住んで、病院の医療事務の仕事をしているが、実家は金印(「漢委那国王印」)が出土したことで知られる志賀島にある。
自分も高校に入ったら同じように車内をきれいにしようと思うようになったのが、3つ年下で、当時中学生だった妹の静香さんだ。たまたま帰宅が遅くなった知代さんを迎えに行き、友人と黙々とゴミを拾う姿を見て、感銘したのである。
05年4月、知代さんと入れ替わるように高校に入学した静香さんは、中学以来続けている剣道に日々打ち込むとともに、部活が終わって夜8時過ぎに西戸崎駅に帰り着くと、「おねいちゃんがやっていたように、ちょこちょことゴミを拾う」活動をするようになった。
そうした松田さんを手伝うようになったのが、志賀中学の剣道部仲間の橋本彩加さん、樋口あずささん、吉田真央さんであり、親友だった一ノ宮由香さん、白坂彩さんだった。
いまは福岡市内で働いている橋本さんは、手伝い始めたときのことをこう振り返る。
「松田さんがやっているのを見て、えらいなと思って一緒に始めた。始めたら習慣になってしまい、途中で止めるのが気持ち悪くなってきて、卒業まで続けたんです」
6人は必ずしも同じ高校ではない。しかし6人の活動は、志賀中学の剣道部の後輩とか、それぞれの高校の後輩なども加わって、多いときには60人あまりの輪に広がった。