2006年度受賞
有城 覚さん
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父について
長女
浜田加織さん
父は普段、誰に対しても優しい。母親の介護でも、よくやらはるなぁ、すごいなぁと思うくらい、やってはります。
常に自分を持ってはる人で、何事にも自信を持って当たっている。もっとも自分というものを、あまり私たちには見せませんが。
私の娘たちは、そういうおじいちゃんが大好きで、動物園へもよく訪ねて行きます。夏場などは、あちらへ行ってバーベキューなどをしたりもしています。父のほうは、そんな孫たちを無条件で可愛がっていますね。
そういうことで父との関係は、私の子どものころに戻っているように思います。当時は、まだそれほどたくさんの動物を飼っておらず、父は時間があると私と兄をあちこち連れて行ってくれ、いろんな体験をさせてくれました。いいお父さんやなぁという感じで、一緒に生活していてとても楽しかった。
そういう父親に対する見方が変わったのは、私が思春期になり、例えば動物をたくさん飼っていることで友達から冷やかされたり、あるいは、そのために家に友達を呼べなかったりしたことからのように思います。父のことが新聞に紹介されたりすることに、とても反発したことを覚えています。

しかし、学校を出て保育園で働くようになり、子どもたちと接しているうちに父がやっている活動を見直すようになりました。動物のぬくもりを肌で感じることの大切さを痛感するようになったからです。
私の勤める保育園にも移動動物園に来てもらい、言葉だけでは感じ取ることのできないものを、子どもはもちろん親御さんにも感じてもらえたのではないかと思っています。
シチズン・オブ・ザ・イヤーを受賞したことは父のやってきたことが社会的に認められたことであり、家族全員で喜び、お祝いとして父の田舎の福井に初めて家族旅行に出かけました。

私自身、格別なことはできないのですが、父のやっていることをできるだけ応援できればなと思っています。兄もまた同様だと思います。
そうした私たちの変化を父がすごく喜んでいると聞いて、家族の歴史を振り返ると、そうやったんや、とあらためて感慨深いものがあります。

受賞コメント
捨てられたり傷ついた動物を見ると、お金や物質追求の世の中で人の心が荒廃していくのを感じます。心の豊かさは人間社会の基本です。それを育むには、小さいころからの情操教育が必要と感じます。そのひとつとして、動物とのふれあいから命の大切さや思いやりを学んで欲しい、そう思いながら続けてきました。その努力が認められて本当にうれしいです。来る日も来る日も動物の世話ばかりで、迷惑をかけてしまった家族にも感謝しています。