
園内は動物の臭気と暖房でむっとするほどだ。全部で150匹(羽)を超えるという。しかもこれらはすべて捨てられていたり、行政機関から持ち込まれたりしたものばかり。血統書つきの動物など1匹もいない。
「ここ数年は、鳥インフルエンザの関係で、学校で飼っていたニワトリなどを、父兄からのクレームを受けて先生方から『面倒を見ていただけませんやろか』と持ち込まれるケースが多い。兵庫県あたりからも持ってこられます」
この動物園は、有城さんが自らの退職金をはたいて造ったもので、最終的には「市民憩いの家」にして公開したいと考えている。ただしここ数年で3度にわたる大手術を受けたこともあって未完成だ。だが動物を愛してやまない有城さんと奥さんの繁子さんにとって、夢の城と言っていいだろう。「シチズン・オブ・ザ・イヤーで頂いた賞金で内装など整えようと材料まで買い込んだのですが、そんなことでまだ手付かずのままなんですわ」
そう言いながら、有城さんはかたわらの繁子さんに目をやりつつ微笑を浮かべた。繁子さんは認知症を患っており、それやこれやで有城さんは公私共に大変な状況にあるのだが、おだやかな言葉遣いを崩すことはない。