
とはいえ有城さん一家は、無事平穏に今までやってきたわけではない。夫婦の病気のこともそうだが、例えば子どもたちは家庭生活を犠牲にしてまでも動物を助け、育てる有城さんに反発し、ある時期口もきいてくれなかったことさえあった。
「部屋を動物たちに占拠されて、家族4人1つの部屋で雑魚寝するようなことさえありましたからね。お金の面でも子どもたちには辛い思いをさせました」
しかし今、年金のほとんどを動物たちのえさ代などに費やしてしまう有城さん夫婦の生活は秀春さんと同居することで成り立っており、100メートルほど離れたところで家庭をもつ加織さんも頻繁に食事を届けてくれたりするのだという。「ある時期、子どもは僕を目の敵にしていた。しかし社会人になって、僕の生き方を容認できるようになったのでしょうね。そんな子どもに育ってくれたことが、何よりもうれしい」
自らの病気と繁子さんの病気を抱えながら、2人の子どもと近所の橋本鉄男さん・正子さん夫妻に助けてもらいながら、「慈愛」の心を育てることの大切さを訴える有城さんは、今日も動物たちの世話に余念がない。