CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2005年度受賞

日本スピンドル製造株式会社 社員一同

  • 齊藤社長の談話

    日本スピンドル製造(株) 社長
    齊藤十内さん

今なお忘れ得ない、あの日の記憶

2010年4月25日で、JR福知山線の尼崎における脱線・転覆事故から丸5年が過ぎた。

会社の目の前の事故現場に設けられた献花台には、5年が経ったことを感じさせない程のたくさんの花束が捧げられ、お参りに来る人の列が長く続いていた。

25日は会社が休みであったことから、前日の24日に全社員で黙祷を捧げ、代表者による献花を行った。事故の発生直後から献身的な救援活動を行った社員は、黙祷の間、それぞれに当時の惨状を思い出し、亡くなった107名の方々のご冥福を祈るとともに、未だ社会復帰に苦しむ被災者に対して一刻も早い回復を祈っていたのだろうと推測している。

あの日、私は安全責任者からの事故の報告を受け、すぐさま現場に急行した。私が会社の門まで駆けつけた頃には、自力で歩ける被災者は既に門の中まで入って来ていて、その向こうに被災者と思われる人達がたくさん見えた。青ざめた顔で声も無く救援を求める被災者、蹲って動けない被災者、その間を縫ってマンションに激突して無残に折れ曲がった車両と事故直後の凄惨な状況を確認した。

目にした被災者は400人以上に上るか・・・、これだけ多数の被災者を短時間で救援出来るのは300人が働いている当社しかない。私はその場で「全社員による救援活動の開始」を決断した。

社内での追悼の会
社員たちの素晴らしい判断に感謝と誇り

当社の社員は勇敢であった。そして被災者が求めることを的確に判断して、結果として見事に組織的な救援活動をしてくれた。梯子や消火器の投入から始まって、仮設救護所の設置、大量の水・タオル・毛布・シートの投入、被災者一人ひとりに対する励まし、そして、100人近い被災者を病院に搬送してくれたのも当社社員の素晴らしい判断であった、と当時を振り返って感謝をしている。PTSDの症状が現れた社員がいたのも当然であったが、2年、3年とケアすることで、問題無くほっとしている。

事故後、特別な訓練を受けていない普通の社員が、どうして想像を越す救援活動ができたのか、とよく質問を受けたが、行動面では日ごろから実践している無事故・無災害を目指した「安心・安全な職場つくり」の活動が活かされたと分析している。

だが、それだけでは語り切れないものがあると思っている。それは、全社員が、心に「人のためになることをしてあげたい」という人間の根源的な資質を、少しだけだが多目に持っていたからではないかと思っている。

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