CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2005年度受賞

堀田 健一さん

「儲からなくてもいい」自転車造りへの熱い想い

注文主はつつましく生活している人のほうが多い。堀田さんの仕事は長らくボランティアのようなものだった。初期の頃は、そうした自転車を造ってくれる人がいることを誰も知らず、一台納車するとようやく口コミで次のお客さんが来るといった具合だった。2人の息子たちはそれを見て、あとを継ごうとは言わなかったし、堀田さん夫婦も言えなかった。

人力併用電動式を導入した時は警察に運転免許が必要だといわれ、当初付けたブランド名は大手企業から商標権侵害だといわれて「ラクラックーン」と変えざるを得なかった。それやこれで何度も夫婦で止めようと話し合ったが、そのたびに続けざるをえない事件が起きた。

決定的だったのは、こんなことがあったからだ。北海道から子どもが一人飛行機で来るというので、羽田まで迎えに行った。だが何時までたっても降りてこない。騙されたかなと思っていたら、その子が脚を引きずるようにして降りてきた。「そのとき心が決まった。この子たちのために、儲からなくてもいい、身を粉にして働き、自転車を造り続けようとね」

自転車を求める人のため新たな方向にも挑む

堀田さんは今年67歳。午前9時から夜は眠たくなるまで働く。が、そろそろ無理が利かなくなってきた。いま考えているのは、6~10種類の基本車体を製作しておき、多少の設計変更で注文に対応できるようにすることだ。部品の準備を含め作業を前倒しでき、無理な仕事を続ける必要もない。そのうえ納車期間が短縮でき、コストも下げられて、お客さんに喜んでもらえる。そうしたシステムならば、あとを継ごうという人が出てきた時に、継ぎやすいだろうとの思いもある。とはいえ、そのためには資金力が必要である。「時間はかかるかもしれませんが、その方向しかないと思っています」

自転車を本当に欲しがっている障がい者や高齢者のためにも、堀田さん、頑張れ!

「私と堀田さんの自転車」

岡本佳代子さんは、埼玉県北本市に住む主婦。7、8年前にリウマチが悪化し、自転車に乗れなくなってしまった。自宅は商店街から離れた住宅地。これまでは、車で週一回買い出しに出かけるなど、何かとご主人頼り。自分でも乗れる自転車がないかと思っていた時に、たまたまテレビで堀田さんのことが紹介された。「踏込式なら、膝が曲がらない私でも乗れるかもしれない。でも値段が高いんじゃないかと思って、1年ほど考えたんです」

ところが、ご主人が「ちょっと堀田さんのところへ行ってみるか」と言い出し、やがて軽量の人力併用踏込式三輪車が出来上がってきた。2009年夏のことだ。最初は道路に出るのが怖かったが、息子さんに励まされて乗り始めた。「今では買い物などで週に1、2回は一人で外出します」。岡本さんはそう話すと、うれしそうに微笑んだ。

都内板橋区に住む松沢晴次さんは、3年前に脳溢血を病み、左半身に麻痺が残った。60歳を少し廻ったばかりで、まだまだ行動的な松沢さんは、やはりテレビで知った堀田さんに、人力併用踏込式三輪車を発注した。今は、2カ月ほど前に届いた愛車を駆って、毎朝5時過ぎ、片道30分ほどのサイクリングに出かける。「行動範囲が広くなったのはもちろん、何よりも気持ちが前向きになりましたね」

千葉県松戸市の阿部久夫さんは、79歳。高齢者でも乗れるアシスト三輪自転車をネット上で探していたところ堀田製作所に出会った。庭弄りが趣味の阿部さんが探していたのは道具や肥料が入る大きな荷台のもの。「いやぁ、重宝していますよ。堀田さんはさすが職人です」と阿部さん。今は運転スキルのさらなる向上に鋭意努力中だという。

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