CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2005年度受賞

堀田 健一さん

一台一台、乗る人に合わせた自転車を30年以上にわたり製作

一台一台、乗る人に
合わせた自転車を
30年以上にわたり製作

取材・文:清丸恵三郎

息子への親心から始まった手作りの自転車

健康な人間は、健康であるだけに傲慢かもしれない。例えば自転車に乗りたくても乗れない人のことなど想像もしない。しかし右手を怪我すればブレーキをかけられないし、足を挫けばペダルを踏むことはできない。いずれにしろ昨日まで乗っていた自転車には乗れないのだ。だが一時的なことだからと、それ以上に想像力を働かせるようなことはない。

堀田健一さんはそうした想像力を30年以上も発揮して、手足の不自由な人たちや高齢者も乗れる二輪・三輪自転車を造り続けてきた。障がいの度合いも部所も、本人の体格・体力も各人異なるので、基本的には注文生産。今年(2010年)、累計1,800台を突破した。

堀田さんが、障がいのある人などのために自転車を造るようになったのは、全くの偶然。息子さんが自転車に乗りたいと話しているのを聞き、なら、お父さんが造ってあげようと言い出したことが始まりだ。

「必要とする人がいる」その思いで今日まで続く道へ

子どものために造った第1号の自転車

子どものころから機械いじり、ことに乗り物が好きで、工業高校を出ると本田技研工業(株)に入社したほどの堀田さんは、見事な踏込式三輪自転車を造り上げた。当時、梱包業を営んでいたが、時間に余裕があると、手製自転車を乗り回す子どもたちと一緒に遊んだ。

そんなある日、近所に住んでいるという50歳くらいの女性が訪ねてきた。

「私にも同じものを造ってもらえませんか。生まれつき足が不自由で、買い物や用足しに出かけるのに苦労してきました。これだと私にも運転できそう。何とかお願いします」

堀田さんは熟慮の末、引き受けた。何しろ水上オートバイを考案、会社に提案したが受け入れられず、自分でやろうと飛び出したほどの“ものづくり狂”だ。天職になるかもしれないとの思いもあった。それが、今日まで続く苦労の始まりだとは露思わなかった。

乗る人のため、手間を惜しまない堀田さんの仕事

とにかく、堀田さんの車は造るのに手間がかかる。乗る人の手が不自由であれば、ハンドルなしで制御する工夫が必要だし、足が不自由であれば、手動式とか電動式などペダル以外で動力を生み出す工夫が必要だ。注文のたびに、注文主の意向と障がいの具合を判断し、どういう車にするのかアイデアをひねり出す。日中は車造りに追われるから、入浴中や布団で横になった時に考える。

製作に入ると、それからがまた大変だ。部品は多くが手作り。量産品を使う場合でも、サイズなどが必ずしもフィットしないから、一手間加えざるをえない。だから堀田さんの工場にはプレス機、旋盤など一通りの工作機械が揃っている。後継者志望の人が来ても、とても堀田さんのようにはいかず、結局、辞めていってしまう。

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