CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

対談

頼られる存在であることがやりがいや喜びに

  • 山根
  • 支援した人の人生に寄り添い、ずっと伴走支援する中で、市川さん自身がそこに感じているやりがいや喜びとはどんなことでしょう。
  • 市川
  • 困ったことがあったとき、真っ先に頼られる存在であることは、この活動を続ける力になっていると思います。そうして、戸籍を取得するために壁を乗り越えようと、一緒に役所で相談しながら少しずつでも前に進んでいるのを実感できたとき、誰にも届かなかったあの日の自分の声を、自分で聞いてあげられたような気がするのです。
  • 山根
  • 幼い日に傷ついた自分の心を、癒しているところもあるのですね。
  • 市川
  • もちろん、役所の方にお願いしているときは、ただもう必死ですが。
  • 山根
  • 確かに、市川さんは役所の人に相談するとき、「専門的なことをきちんとわかっている人が教えてくれなければ、私たちにはできないんです」と、必死にお願いするとお聞きしました。
  • 市川
  • 本当にそうなんです。私たちは、教えてもらわなければわからないのですから。繰り返しお願いして、それが届いた担当の人は、今度はとても熱心に調べて教えてくれるんです。
  • 山根
  • 担当の人の心を動かすのも、私は市川さんの素晴らしい人間力だと感じますね。これだけ多くの人に頼られているのも納得できます。

無戸籍者と一緒に扉を開き行政を動かす

  • 山根
  • 自治体によっては、無戸籍者のために専門の担当者を置くようになった役所もあるそうですね。市川さんと無戸籍の人が一緒になって、今まで閉じていた扉をこじ開けたわけですね。
  • 市川
  • それが実現できたのは、無戸籍者の現状を広く社会に知らせるため、当事者の方が報道機関の取材を受け入れてくれたからなのです。無戸籍である本人が「自分も命がけだから、一緒に出ます」と言ってメディアに出てくれたからこそ、行政も動いてくれたのだと思います。
  • 山根
  • 無戸籍の人の勇気と、ずっと寄り添ってきた市川さんが力を合わせることで、新たな前例を作ることができたのですね。最初にこじ開けたわずかな隙間が、これから大きな広がりになっていくのだと思います。
  • 市川
  • 今回、こうして賞をいただいたことも、無戸籍者が抱えるさまざまな困難について広く知ってもらえる機会になり感謝しています。
  • 山根
  • 無戸籍者支援の輪を広げ続ける市川さんのそのエネルギーは、どこからきているのでしょう。
  • 市川
  • きっと、自分で取り入れているのではなく、周りの皆さんから自然にいただいているのだと思います。活動を続けるエネルギーがそのまま自分に返ってくるように、支援した方の笑顔や周りの皆さんからの応援の言葉が私の力になるのです。ですから、モチベーションが枯れるということがありません。

変わらぬ情熱で日本を少しずつ変えていく

  • 山根
  • 今回、市川さんの活動を通し、無戸籍者の方が戸籍を取得することの大変さを実感しました。憲法で保障された誰もが自分らしい幸せな人生を全うできる世の中であるためには、戸籍のない人がもっと普通に取得できるような仕組みであってほしいと改めて思いました。
  • 市川
  • そういう点では、生まれた子どもが無戸籍になるケースが多い「離婚後300日以内に生まれた子の父は前夫になる」という規定が見直され、改正民法が来年施行されることは一歩前進です。これから血縁上の父親が認められるようになれば、無戸籍になる子どもは減っていくと思います。
  • 山根
  • お母さんやお父さんの声が、国にも届くようになってきたのですね。
  • 市川
  • ただ、この「離婚後300日問題」はこれから生まれる子どもについてなので、今、無戸籍で生きている人たちをどう救っていくのか。それがまだまだ大きな問題です。100人いれば一人一人が異なる困難を抱えていますから、せめて住民票だけでももっと簡単に作れるようにしてほしい。そして誰もが健康保険証が受け取れるように、そして、働けるようになってほしいと思います。
  • 山根
  • 今日、無戸籍者の支援をすることが、ご自身の癒しにもなっているというお話を聞いて、真由美さんの情熱の原点を見た思いがします。そして、これまで閉じていた扉を無戸籍者と一緒にこじ開け、日本を少しずつ変えていこうという姿に敬意を感じました。これからもぜひご活躍ください。
  • 市川
  • 無戸籍者の辛い立場や幸せになりたい想いに深いご理解をいただき、改めて心の温まる思いがしました。対談を通し、無戸籍者にとって私が必要な存在だと実感させてくださったことを胸に刻み、また頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。
無戸籍者を支援するため全国を飛び回り、寄り添って伴走を続ける
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