
(下)当事者の想いを率直に伝える講演に、全国から依頼が寄せられている理事の丹野智文さん
JDWGの主な取り組みは、認知症本人ならではの視点から行う政策提言や、国や自治体から「希望大使」に任命されて行う認知症に理解を深めるための普及・啓発活動です。さらに講演会やメディアを通じた発信のほか、認知症の先輩として本人や家族に暮らしの工夫や前向きに生きる姿を伝えたり、要望を聞いたりする「ピアサポート」も重要な活動となっています。
副代表理事の戸上守さんは、「この6年で大分県内の17市町を3周ほど回り、多くの認知症本人やご家族にお会いしてきました」と積極的にピアサポート活動を行っています。
56歳のとき認知症と診断された戸上さんは、ショックで1年ほど家に引きこもっていましたが、デイサービスで同年代の仲間と出会い、一緒に農作業やソフトボールなどをするようになって徐々に前向きになれたと言います。そんなときインターネットでJDWGの存在を知り自ら申し込んで参加。ピアサポーターとしての活動が認められ、国と県の双方から「希望大使」に任命されています。
JDWGの取り組みでは、認知症本人による「講演」も当事者が前向きに一歩踏み出す大きなきっかけになっています。理事の丹野智文さんは、12年前の39歳のときに若年性アルツハイマー型認知症と診断され大きなショックを受けました。しかし、いつも元気で笑顔を絶やさない認知症の当事者に出会ったことで考えが一変。その方の勧めで講演をするようになり、講演では周囲に気付きを与える当事者ならではの声を伝えています。「家族は心配から日常生活のさまざまな行動を先回りしてやってくれます。でもそれは『依存』を生み出します。失敗したとしても工夫することで成功体験が生まれ、自信を取り戻すきっかけになるのです。ぜひ、私たちから失敗する権利を奪わないでください」。そんな風に本人の想いを伝える丹野さんの講演には、全国から多くの依頼が寄せられています。