CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2023年受賞

山田 美緒さん

布地と笑顔を「半分こ」する「Dress for Two」

そんな「キセキ」の事業の中でもユニークなのが、2018年から始めた「Dress for Two」です。これは、アフリカ産の「キテンゲ」というタテ約5.4m、ヨコ約1mの布地をルワンダ人と日本人が共同購入し、半分に分け合うというもの。購入費は日本人が多く(1万2000円~2万4000円)負担するのに対し、ルワンダ人の負担はシングルマザーが購入できる200円程度に抑えています。事業を始めるに当たって山田さんは、大学時代の友人である岡本望さんに声をかけ、日本側の対応を依頼しました。

半分に分けられた布は、購入者の希望により巻きスカートやラップドレスなどに仕上げられます。縫製はルワンダで行うので、シングルマザーには縫製の仕事で収入が生まれる仕組みです。このため、2022年に職業訓練支援として縫製のトレーニングセンターを開設。2023年に最初の卒業生を送り出し、現在は16人が学び、腕を磨いています。

この事業が成り立つ背景には、ルワンダのテーラー文化があります。ルワンダの女性は他の人と同じ既製服を嫌がり、布をテーラーに持ち込んで縫ってもらうことが普通にあって、直しや修理の依頼も多いそうです。軌道に乗った2022年には岡本さんもルワンダまで駆け付け、「Dress for Two」のファッションショーを開催して、会場にはたくさんの笑顔が溢れました。

(左上)色鮮やかで柄も美しいキテンゲは日本人にも人気(右上)シングルマザーの収入につながる縫製のトレーニングセンター(下)2022年には「Dress for Two」のファッションショーも開催

収入を支える「インターンシッププログラム」

もう一つ、「キセキ」の取り組みで高い評価を得ているのが、『ボランティア・インターンシッププログラム』です。

これは次世代の人材育成につながるもので、アフリカでの国際貢献に関心のある日本の若者に、現地でのさまざまなボランティア体験を提供するものです。活動は「キセキ」の施設でボランティアをするだけでなく、ホームステイやスラムツアー、農村体験ツアーなどもあり、これまで500人以上の学生や社会人が参加しています。宿泊と食事も提供する1週間500ドルの有料のプログラムで、数カ月の長期滞在者もいるなど好評を得て、収入面で「キセキ」を支えています。

こうした取り組みを通してシングルマザーとの信頼が深まる中、山田さんが彼女たちから元気をもらったり、心を温めてもらうことも増えました。

長く「キセキ」で働き、子どもができて一度辞めたある女性は、再び仕事をしようとしたとき、他に条件のいい就職先があったにもかかわらず、「やっぱりキセキがいい」と言って戻ってきてくれました。また、最初の頃は素直ではない性格に手を焼いたシングルマザーが、地道に働き続けるうちに「キセキ」でもトップクラスの信頼できる社員になっているなど、「10代から向き合い続けたからこそ今の彼女たちがある。その成長は本当にうれしい」と、山田さんから笑みがこぼれます。

ルワンダで社会貢献をしたいという参加者に、宿泊、食事に加え、「キセキ」での施設でのボランティアプログラムを提供。
夜にはミーティングを行い山田さんもアドバイスを行う

これからもお母さんと子どもを笑顔にする仲間として

(上)貧困の中にあっても明るく笑顔が絶えないルワンダの女性たち(下)日本の学生にとってインターンシッププログラムは、自らを成長させる貴重な体験だ

現在、「キセキ」では施設内の業務や、託児所、幼稚園、こども食堂などを担当するスタッフのほか、毎年150人くらい来るインターンシップ参加者の身の回りの仕事をするレジデンススタッフがいます。彼女たちは、日本人の要望を聞いてプログラムをアレンジしたり、現場でコーディネートするようにもなっています。

こうしたスタッフの成長により、山田さんは子どもたちの学校が夏休みになる5月~7月は日本に戻り、学生時代に友人の実家に行って大好きになった、高知県四万十市に滞在できるようになりました。

もちろん、こうなるまでには信頼していたスタッフにお金をだまし取られたり、多くの裏切りにもあってきました。しかし、山田さんはシングルマザー支援を諦めることなく「盗むほど困っているなら言ってほしい。言ってくれたら助けるから。言わずに盗んだら即時解雇よ」と毎月のミーティングで繰り返し伝えています。実際、困っている女性には、子どもの学費や健康保険料、食料やおむつの配布など、安心して働ける環境をつくってきました。

そして今、彼女たちの多くは自分の持ち場や仕事に責任を持ち、自分の頭で考え動けるようになってきていますと話す山田さん。ともに、お母さんと子どもたちを笑顔にする仲間として、これからも山田さんの挑戦は続きます。

「キセキ」で働く女性たちは、一緒にルワンダのお母さんと子どもたちを笑顔にする仲間だと山田さんは話す
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