CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2023年受賞

フラワーメイクアカデミー「ブラインジェンヌ」チーム

心まで華やぐメークで自分らしく輝いてほしい!

心まで華やぐメークで
自分らしく輝いてほしい!

心まで華やぐ
メークで自分らしく
輝いてほしい!

就活を契機にメークを通し人と関わるように

「メーク講座に参加した皆さんが喜んでくださり、最後に花が咲いたような咲顔(えがお)になって帰っていかれるのを見るのが一番の原動力なんです。私は自分を支えてくれているすべての人に感謝の気持ちでいっぱいです」

自ら視覚に障がいがありながら、当事者目線で多くの視覚障がい者にメーク法を伝えている北條みすづさんは、活動に打ち込む想いをそう表現します。

北條さんは生後1カ月の検診で小児がんと診断され、その後左目を摘出。右目は抗がん剤と放射線による治療で微かに視力を残すことができましたが、ものの形や色がぼんやりわかる程度です。そうしたハンデを背負いながらも、幼少期から持ち前の明るく常に前向きな性格の北條さんは、周りから左目のことをからかわれても「これが自分なんだから、隠したりしないという思いがありました」と振り返ります。

そんな北條さんが、「かわいくキレイになりたい」と本格的にメークを始めたのは、就職活動をするようになった18歳のとき。最初はファンデーションを塗り過ぎて顔が真っ白になるなど失敗の連続でしたが、目が見える友人に手伝ってもらい練習を重ねました。もともとおしゃれが好きだったこともあって、楽しみながら続けるうちにみるみる上達。自分のメークに関する情報をSNSのグループチャットで発信すると、視覚障がいのある友人から「教えてほしい」と言われるまでになりました。

幼少のころは周りから目のことをからかわれたり、両親が自分よりも気にしていることがあったと話す北條さん。そんな中でも持ち前の明るさを発揮し、大好きなおしゃれも楽しんでいた

信頼できるメーク講座と出会い講師の道へ

SNSのグループチャットでも皆を笑顔にする人気者の北條さん

その後、経済的に自立したいと障がい者の職業能力を開発する学校に入り、ビジネススキルを学んでいた北條さんは、訓練を受けながら就職活動する中で「メークもビジネスマナーのひとつ」であることを知りました。それをきっかけに、北條さんはメークについてもっと学びたいという気持ちが強くなりました。こうして2019年、全盲の友人の紹介で「化粧療法」と「肌に触れるケア」を実践する「フラワーメイクアカデミー」代表、江口美和子さんの講座に参加したのです。

ところが、折からの新型コロナウイルス感染症の拡大で講座への参加は中断。自身も体調を崩して2週間の入院生活を余儀なくされました。コロナ禍で家族の面会もままならず、隔離生活ともいえる状況の中、思いがけなく自分と向き合う時間を持つことになったのです。

このとき、体の不調から将来についても不安になっていた北條さんを元気づけたのは、視覚障がいの女性が集まるグループチャットでした。そこでは、メークやファッションなどに関して北條さん宛てに質問が寄せられ、相談に答えながら、自分が必要とされていることに大きな喜びを感じたのです。そして、「多くの視覚障がい者が悩むメークについてきちんと教えるには、しっかりした知識や技術が必要」と痛感。真っ先に目に浮かんだのが、入院前にメーク講座に参加した江口さんの顔でした。そこですぐに「もう一度私にメークを教えてください」と想いを伝えたのです。

連絡を受けたあと、江口さんは北條さんの気持ちを確かめるため改めて自分から電話をしました。単に「自分が習いたい」のと、「他の視覚障がい者にも教えたい」では、伝え方が違ってくるからです。化粧療法研究家として高齢者や精神障がい者向け講座の経験があり、視覚障がい者の外出を援助する同行援護の資格も取得していましたが、講師として育てるのはレベルが異なります。はたして北條さんが講師となるための理論や技術をきちんと伝えることができるのか。それでも、自ら「何事にも挑戦するタイプ」という江口さんは、北條さんの想いを真正面から受け止め、「通常設定している資格取得に必要な講座の時間は度外視して、自分が納得するまでとことん関わってみよう」と覚悟を決めたのです。

(左)フラワーメイクアカデミーでは、指や手を使い自愛の気持ちで自分に触れる大切さを伝えている
(右)「化粧療法」と「肌に触れるケア」を実践している江口さん

自ら考案した「ブラインジェンヌメイク」

江口さんは、北條さんが知識や技術を身につけて資格を取得したら、視覚障がい者に対してメークを教える講座を開設するというゴールを設定。それを目指して努力が積み重ねられるようにしました。自分のことをそこまで考えてもらっていると知った北條さんは、感謝の気持ちとともに、何があっても資格を取るんだという決意を新たにしたそうです。

2021年10月、再び江口さんの「マインドタッチフラワーメイクセラピー養成講座」で学び始めた北條さんは、オンラインから始め、コロナが落ち着きはじめてからは対面で実技を受講。通常は12時間で学ぶ知識や技術を1年かけて学び、その過程で江口さんの監修を受けながら、目の不自由な人が自分でメークできる化粧法を考案していきました。自分が日常的に行っていたメークをベースに創り上げたそのメーク法こそ、「パリジェンヌのように輝く」という想いと、視覚障がいを意味する「ブラインド」から名付けた、「ブラインジェンヌメイク」でした。

北條さんは1年かけて「マインドタッチフラワーメイクセラピー養成講座」を修了。その過程で、江口さんの監修を受けながら「ブラインジェンヌメイク」を考案した
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