このマギーズ東京の設立に、人一倍の強い熱意と行動力をもって尽力したのが、センター長で共同代表理事である看護師の秋山正子さんだ。
39歳の時、末期がんの姉を在宅で看護した秋山さんは、限られた中でも姉が子どもたちとかけがえのない時間を送ることができたのを経験。それを機に、療養中の人とかかわる時間をもっと持ちたいと1992年に訪問看護の道に進んだ。しかし、医療の進歩で患者やその家族ががんと共に歩む時間が長くなっているにもかかわらず、自分たち看護職がそうした在宅ケアを必要としている人とつながれるのは残された時間や選択肢が少なくなってからで、「もう少し早くその人たちの悩みが自分たちに伝われば、もっといい時間を過ごしてもらうことができるのに」と痛感。がんと向き合う早い段階から、誰もが気軽に相談できる場所があればという想いを強くした。
そうした中、2008年に国際がん看護セミナーで登壇した秋山さんは、マギーズ・エジンバラセンター長のアンドリュー・アンダーソン看護師と出会い、その相談支援の考え方や実践方法に感銘を受け大いに共感。翌年には仲間とエジンバラセンターやウエストロンドンセンターを視察した。ただ、マギーズには建築や資金面で高い基準があったため、設立に向かう準備段階として、2011年にマギーズのコンセプトを取り入れた「暮らしの保健室」を開設したのである。