CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2018年度受賞

NPO法人 「飛んでけ!車いす」の会

車いすを直接手渡し喜ばれることは、ボランティアの旅行者にとっても格別な体験だ

まだ見ぬ使用者の笑顔を思い浮かべ、入念に調整

最適な車いすを届けるため、海外とやり取りするのがコーディネーターだ。旅行者からボランティアの申し出があると、渡航先に車いすを必要とする人がいないか照会。希望する人が見つかると、体の特徴や障がいの状況について情報を提供してもらう。

コーディネーターの太田さんは、「海外の方が相手でも、こちらは車いすを届けたい、相手は車いすが欲しいという目的がはっきりしているので、互いに意思が通じ合うのです」と話す。最も気を配るのは相手にマッチした車いすを送ること。本人に合わない車いすは体に負担をかけるが、座ってもらって調整するということができないため、整備チームへ提供する情報には細心の注意を払う。

データベースから選ばれ、丁寧に整備・調整された車いすは、旅行者の搭乗日に合わせて空港に届けられる。こうして手荷物として運ばれた車いすは、現地の空港で手渡すこともあれば、自宅を訪ねて直接届けることもある。受け取った人の笑顔に触れる体験は旅行者にとって格別で、何度もボランティアに協力する人が少なくない。

海外とのやり取りは子―dhネーターが担当し、使用者の詳しい情報を整備チームに伝える

雇用につながることも視野に、整備や修理技術を伝える

せっかく届けた車いすも、部品が破損したりパンクしたりして使われなくなってしまう例も少なくない。そこで「飛んでけ!車いす」の会では、届けた車いすをできるだけ長く良好な状態で使ってもらえるよう、英語、インドネシア語版の整備マニュアルを作成している。それらを活用して、現地を訪れ整備や修理の技術を伝えているほか、習得した技術が雇用につながることも目指しているのだ。

近年ではインドネシアのバリ島やネパールなどを整備チームが訪れて技術を伝え、参加したメンバーからは「実際に行ってみて初めて現地の“必要”が見えてくる」という声も聞かれた。

また、この20年の間には、航空会社の預け入れ荷物の重さやサイズの制限が厳しくなったり、格安航空会社の参入で手荷物に追加料金がかかるといった課題も出てきている。このため、規定のサイズに収まるよう、部品の一部を取り外して梱包するなど、さまざまに対応している。ボランティアで協力してくれる旅行者にも変化があり、会の設立当初は学生の旅行者が多かったが、現在ではシニアが増えて活動に大きな役割を担っている。

届けた人にも、旅行者にも、感謝される喜び

車いすを受け取った人の笑顔の写真を見るときが、スタッフ一番のうれしい瞬間だ

「飛んでけ!車いす」の会のスタッフも、発足当初は学生が中心だったが、旅行者と同じようにシニアが担い手となった。吉田さんは「それぞれが、語学力や機械整備、縫製など得意な技術を生かし、一人ひとりの小さな力が集まって会が支えられています。活動が続いている原動力もそこにあります」と話す。この20年で世界80カ国以上に届けられた車いすは、2900台を超えている。

車いすを受け取った人からは、「自分でやれることが広がりました」「私の人生を変えてくれました」「車いすに乗ってどこでも行くことができます。感謝しています」など、数え切れない喜びの言葉が寄せられている。ボランティアの旅行者からも、「今までの人生で最も素晴らしい体験」「人生観が変わりました」など、感動の声が届けられている。

受け取った人の笑顔の写真を見るのが、一番うれしい瞬間だと話す吉田さん。「大事なのは単にモノを送るのではなく、『あなたのための車いす』を、気持ちを込めて直接手から手に渡していることなんです」。これからも、心の込もった車いすが、必要としている人のため世界中へ飛んで行く。

シニアのボランティアを中心に、全員の力が集まって活動が支えられている「飛んでけ!車いす」の会。真剣な作業の中にも、常に明るい笑顔が絶えない。
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