CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2017年度受賞

清水 辰吉さん

苗木を手渡す清水さんの眼差しは、子どもたちの健やかな成長を願う優しさに満ちている

子どもたちの喜ぶ顔を思い浮かべ、丹精込めて準備

苗木の贈呈は、家族の協力も大きな支えになってきた。入学式当日は特に忙しく、奥さまのうた子さんと娘の掲子さんは、早朝から苗木の一本一本に紅白のリボンを付ける準備などに汗を流し、家族全員が協力して活動を継続してきたのである。

また清水さんは、接ぎ木や挿し木などで苗木を増やすことが体力的にきつくなってからも、買ってきた苗木をそのまま子どもたちに贈ることはしていない。苗木を受け取る子どもたちの笑顔を思い浮かべながら、きちんと根や芽の処理をして自宅の庭に仮植えをし、入学式の日にはそのまま植えられるように土を付け、丁寧に根巻き作業などをしてからお祝いの紅白リボンを付け、持参している。

これまで苗木を贈呈した児童数は370人を超えた。活動を続けてきてうれしいことの一つが、苗木を贈った児童や親から「きれいな花が咲いたよ」「今年もおいしいクリの実がなったよ」と声を掛けてもらえることだと話す清水さん。「感謝されるから行う行為は本物ではないと承知していますが、新聞で紹介していただいたり、人から褒められたりすると、自分のやっていることは間違っていなかったと感じることができ、これからも続けようという自信が湧いてきます」と目を細める。

入学式当日は、長女の掲子さんも早朝から苗木の準備に忙しい

喜びと感謝の言葉が、半世紀にわたる活動の原動力に

「畑の先生」として、地域の仲間とサツマイモづくりも指導

苗木の贈呈が55年の節目を迎えた2017年、後閑小学校と同校PTAから清水さんに感謝状が贈られた。「人は褒められ、認められて育っていく」と常々話す清水さんにとって、地域からの感謝の言葉は大きな力になったことだろう。

小学校や地域とのつながりは、苗木の贈呈にとどまらない。地域の仲間と一緒にサツマイモの植え付けから収穫までを小学校で指導する「畑の先生」としても、子どもたちから慕われている。毎年、清水さんたちは校庭の一角に設けた畑で児童とともにサツマイモの苗を植え、その後も畑の見回りや育て方の指導を行い、秋のサツマイモ掘りから収穫祭まで労を惜しまず協力している。

56年前のあの日、掲子さんの入学祝いに植えたスモモは、清水さんの家族やふるさとを見守るように大きく育ち、春がくるたび白く美しい花を咲かせる。そしてそんな木々が、毎年増え続けているのだ。

いつしか苗木の贈呈が生きがいになったという清水さんは、「生あるかぎり続けて、子どもたちのためはもとより、皆さまのご期待にお応えしたい」と熱い想いを語る。

子どもたちとの記念撮影では、清水さんの笑顔もいっそう輝く
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