
入学や卒業時に贈られる記念品は多種多様あるが、苗木は贈り物の中でも特別で、子どもたちと一緒に成長していく。清水さんはそんな苗木を、ツツジやサクラ、ハナミズキ、クリ、ミカン、モモ、カキ、キンモクセイなど多彩に用意し、毎年新一年生に贈呈してきた。
活動は半世紀以上に及ぶため、兄弟姉妹はもちろん、親子二代にわたって苗木を贈られた家庭も珍しくない。始めてから56年目となった2018年の入学式でも、清水さんは苗木の植え方や育て方とともに、苗木贈呈に込めた想いを14人の新入生と保護者に優しく語りかけた。
「今は、どうして苗木を植えるのだろうと思うかもしれません。でも、5年、10年、20年と経つうちに、木はどんどん大きくなって、花が咲き、実がなるようになります。そのときに、ああ、これは僕の木だ、私の木だと思って、入学式でもらったことや植えた日のことをきっと思い出すよ。お父さんもお母さんも、植えて良かった、子どもたちも苗木もこんなに大きくなったねと思い出すよ」。新入生を見つめる清水さんの目は、優しさに満ちていた。