CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2016年度受賞

堀内 佳美さん

アークの最初の訪問先となった児童養護施設での活動。子どもたちに紙芝居や折り紙の楽しさを伝えた

本をリュックに詰め込み、楽しみに待つ子どもたちのもとへ

アーク設立の2010年、タイは政情不安で大変な時期だったが、読み聞かせを手伝ってくれるボランティアも見つかり、6月にはスタートにこぎ着けた。記念すべき最初の訪問先は児童養護施設。紙芝居や折り紙に喜ぶ子どもたちの声が印象的だった。

「それでも、申し出を断られることもありましたが、活動は少しずつ広がっていきました」と話す堀内さん。リュックに本を詰め込み、乗り合いバスで施設を回る日々が続いた。

やがて、チームとして活動する大切さを感じた堀内さんは、集まったボランティアとしっかり計画を立て、車に本を載せて農村を回り、学校や児童施設、公園、病院などで本の読み聞かせや貸し出しをするようになった。「読み終わっても、まだ帰りたくないと言って泣く子もいて、そんなときはうれしいですね」

移動図書館のニーズは地方のほうが格段に高いことや、地元の財団から誘われたこともあり、堀内さんは2012年、活動の拠点をタイ北部のチェンマイ県プラオ郡に移した。ここで初めて有給のスタッフを雇ったことで、より計画性を持って移動図書館の活動ができるようになったのである。

移動図書館で訪れた小学校の生徒たちに本を紹介する堀内さん

言葉が持つ可能性を、現地の人たちが自ら広げてほしい

読書の素晴らしさを伝える中から、新たな活動も生まれた。移動図書館をやろうと山村を訪れたとき、倒木に道をふさがれ村に泊まることになり、地元の人とじっくり話す機会を得たことから山岳地帯の現状を知ったのだ。そこに住む少数民族の人たちは、ほとんどタイ語を話したり読み書きすることができない。このため、街に出ても言葉の壁で仕事の機会が得られないというのだ。

「それなら、子どものうちからタイ語が学べる施設をつくろう」。こうして、アークは村の人に土地を提供してもらい、幼児教育センター「太陽の家」を設立することにした。山岳地帯の村では、大人が畑仕事に行くとき小さな子どもを連れて行くことも多かったので、子どもたちを預かる施設は安全面でも役立った。

先生はタイ語ができる現地の村人にお願いした。「大事なのは村の人が主体となってやることなんです。そうしないと、継続していくことはできないのです」

多くの人の支援を受けながら、現在は別の少数民族の村で2カ所目のセンター「笑顔の家」も運営している。

成長する仲間と共に、タイの未来へ想いをはせる

活動を通しスタッフも成長

2013年には、移動図書館だけでなく、誰もが利用できるコミュニティ図書館として、6000冊の本とDVDを所蔵するランマイ図書館がオープンした。もちろん、プラオ全域を回って本の貸し出しや読み聞かせを行う活動も継続しており、外出が難しい高齢者や障害者のところへは直接訪問して貸し出しを行っている。

「タイの人や子どもたちに、本の貸し出しや読み聞かせを喜んでもらえることはもちろんですが、スタッフの成長を実感できるのがとてもうれしいのです」と話す堀内さん。スタッフから積極的に新しい提案が出たり、主体性を持って問題を解決しようとするようになってきて、ゆくゆくは現地のスタッフにすべて任せたいと思っている。

最近は、地域に図書館があって良かったという声も増え、他の郡から毎週のようにやって来る人もいるという。そんな様子を見ながら、「本の素晴らしさを知った子どもたちが、やがてお父さんお母さんになったとき、今度は自分の子どもたちに読み聞かせをしてくれたら最高ですね」と堀内さんの夢は膨らむ。

ランマイ図書館は大人から子どもまで本を楽しむ憩いの場に
Page Top
Page Top