CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2016年度受賞

堀内 佳美さん

生涯の友となる本との出会いを一人でも多くの人に

生涯の友となる本との出会いを
一人でも多くの人に

いつも心の支えだった本への感謝が活動の原点

「読書が身近にないタイで、本の素晴らしさ、言葉を学ぶ喜びを伝えたい」。そんな想いで子どもたちに読み聞かせを行い、図書館や幼児教育センターを運営している日本人女性がいる。

高知市に生まれ、生後間もなく先天性の白内障と緑内障の合併症を発症した堀内佳美さんは、高校3年生のとき完全に光を失った。そんな堀内さんの心の支えとなってきたのが、いつも身近に寄り添ってくれたたくさんの本だった。

幼い頃から祖父や両親に本の読み聞かせをしてもらっていた堀内さんは、読書を通してさまざまな世界を知った。「よく読んでもらっていたのは『若草物語』や『家なき子』などの児童文学でした。小さいので内容をよく理解していなかったのですが、読んでもらえることがうれしくて、そこから物語の世界に入っていきました」。そして、小学校に入り点字を覚えてからは、一日中点字本を読む「本の虫」になったという。

こうして、楽しいときも、つらいときも、いつもそばに寄り添ってくれる本と一緒に過ごした日々が、堀内さんの活動の原点になっている。

公園に移動図書館が到着すると親子連れがすぐに集まる

留学を通し世界に触れ、高まっていった国際貢献への熱い想い

高知を離れて東京の高校に進学した堀内さんは、同級生や先輩がアメリカに留学していることに触発され、「私も行きたい」と熱望するようになった。しかし、両親は大反対。先生から両親を説得するようアドバイスを受け、高知に帰り二人の前で正座をして留学への想いを訴えたのである。こうして、高校3年生の時に一年間のアメリカ留学を果たした堀内さん。留学中にタイ人の友達と知りあい、タイに興味を持つようになっていった。

大学は国際基督教大学に進学。この頃すでにタイ留学を考えていた堀内さんは、まず1年生の3月に少数民族の村で教会をつくる短期間のワークキャンプに参加した。実際にタイに行ったことで留学したい想いがさらに募り、国際貢献への熱意が高まっていったという。

大学3年生のときにタイ留学を果たした堀内さんは、さまざまな障害者団体の活動に参加。家庭訪問に同行したり、アルバイトなども経験して、タイでのネットワークを広げていった。それと同時に、バンコク以外の各地の村を訪れる中で、日本とは読書環境がまったく異なり、本が非常に高価で図書館もほとんどないことを知ったのである。

タイへの関心を強めた堀内さんは、大学時代、タイでワークキャンプや、さまざまな障害者団体の活動に積極的に参加

目標に向け走り続け、NGO「アークどこでも本読み隊」を設立

幼い頃から読書に親しみ、楽しいときも悲しいときも、いつも身近に本があった堀内さんにとって、タイの読書環境は驚くべきものだった。

「現地の友達と本の話をしても、読書をする人イコール真面目で頭がいい人というイメージなんです。本は勉強するためのものであり、子どもたちの多くは読書を楽しむということを知らずに育つのです。なんとかしたいという想いが生まれました」

留学を終えて帰国した堀内さんは、大学を卒業して日本の企業に就職。しかし、タイの子どもたちと本をつなげる活動をしたいという想いは膨らむ一方で、2年で会社を退職すると、インドに創設された社会事業家の養成学校に入った。「インドから帰国後、タイで移動図書館を計画していると地元の新聞が取り上げてくれ、賛同いただける方も見つかり、2カ月後にはタイのバンコクに渡りました」

こうして2010年、「これまで読書が自分を支えてくれたように、タイの人たちに本の素晴らしさを伝えたい」と、NGO「アークどこでも本読み隊」が始動した。アーク(ARC)とは「Always Reading Caravan」の略である。

インドにある社会事業家の養成学校で、社会を変えるためのノウハウを1年間学んだ
物語の世界に子どもたちを引き込む堀内さんの読み聞かせ
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