学びの場はつくったが、次に直面したのが就労の問題だった。「学校段階でつまずいた子が社会に出て、再び壁にぶつかって引きこもりになってしまうことが多いため、就労支援の必要性を痛感したのです」。こうして2010年に開設したのが「置賜若者サポートステーション」だ。
ここでは専門のスタッフが相談に乗り、ともに支援プログラムを考えながら就労を支援しており、これまで約600人が登録し、現在は約140名がサポートを受けている。「働く意思はありながらうまくいかず、心身のバランスを崩して入院した若者を、病院からの紹介で支援するケースも増えています」
失敗を恐れずに実践的な仕事のトレーニングができ、就労相談に来やすい場所をつくりたいと考えた白石さんは、2013年に支援者から協力を得て会員制居酒屋「結」をオープンした。「その時に関わっていた若者は居酒屋で将来働いてみたいと話していました。それに以前から、本音が聞けるのは一緒に飲んでいる時が多かったことと、活動を続けるにはある程度の収益が必要だということもありました」
居酒屋「結」を会員制としたのは、職業訓練の場であるという趣旨をお客さんに理解してもらうためだ。すでに会員は3300人(2016年7月時点)を超え、笑顔と明るさをモットーに接客するうち、人間関係が希薄だった彼らにともに働く仲間という感情が芽生え、接客を通じて自信を取り戻し元気になる姿が多く見られるようになった。
これまで20人以上が「結」で自信を得て巣立っていった。彼らを送り出すとき、白石さんはいつも「失敗したら戻っておいで」と声を掛ける。「ようやく自分のやりたい仕事を見つけ、家族もひと安心していたのが、実際はうまくいっていなくて、自分に価値がないと思い込む子もいました。すべての人にやり直しができる場所が必要なんです」
「子どもや若者を地域で育て、将来、彼らが地域社会に参画することで地域を発展させていきたい」。そう考える白石さんは2015年、子どもからお年寄りまでが触れ合える場として、駄菓子屋を併設した寺子屋も開設した。放課後、子どもたちやフリースクールの生徒が勉強をしたり、お年寄りから昔の遊びを教わったりしており、今後はボランティアの学生にも参加してもらう計画だ。