CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2015年度受賞

白石 祥和さん

失敗してもいい。ともに一歩踏み出そう

失敗してもいい。
ともに一歩踏み出そう

困難を抱える子どもとの出会いから、支援の道へ

山形大学教育学部に学んだ白石祥和さんは、卒業後は生まれ育った米沢市で命に向き合える仕事をしたいと、消防士を目指した。結果はまさかの2年連続不合格。失意のなか北海道の牧場に仕事を見つけ、米沢を後にしたのである。

北海道でひと冬を過ごした白石さんに、米沢市の教育委員会から1本の電話が入る。「小学校の臨時教員をしないか」。これが転機になった。

帰郷した白石さんが担当したのは、特別支援の必要な一人の小学生。しかし思うように指導ができず、他の先生の目も気になる日々が続くうち、「とことんこの子と向き合ってみよう」と、休日もその子に寄り添い、自分が子どものころ楽しかった山や川へ誘うようにした。「あるとき山へ栗拾いに行き、川原で焼いて一緒に食べていると、今までにない笑顔を見せたのです。こんなふうに子どもは変われるんだと思いました」。その子は次第に教室でも態度が落ち着くようになり、協調性も出て、周りからも認められるようになった。

この心の交流が、次第にフリースクール構想へとつながっていったのである。

小学校の臨時教員として子どもと向き合ったときは、休日もともに過ごし信頼関係を築いた

たった一人の生徒から、念願のフリースクールをスタート

フィリピンでストリートチルドレンの支援活動を行い「教育の自由」を学んだ

臨時教員として子どもたちの前に立つなかで、自分にはあまりにも経験が少ないと感じるようになった白石さん。そこで、まず自分の目で見た世界を自分の言葉で伝えようと、教員の職を辞してフィリピンに渡り、ストリートチルドレンの支援活動に参加した。

現地の子どもたちの力強さや輝く笑顔を見ながら、「教育の形はもっと自由でいい」と実感して帰国。さまざまな困難を抱える子どもたちを支援するため、チラシに自分の想いを綴って市内7000軒を訪問し、11人の賛同者を得た。そして、2007年5月、NPO法人「With優」を立ち上げフリースクールを開設したのである。

学校に行けない子ども、または行かないことを選択した子どもたちのため、たった一人の生徒からスタートしたフリースクール。やがて口コミで生徒が増え、半年で5人になった。「自分の生活もありましたので、朝と夜は魚市場などで働きながらでしたが、そんな姿を見せることも教育になると考えました」。そうして自分が働いた職場にフリースクールの生徒を雇用してもらうこともあったという。

生徒たちには、自ら学ぶ力を身につけてほしいと話す白石さん。「これまで出会った生徒たちがいたから、今の自分があります」と話す

「自立心を育んでほしい」と、ボランティアや地域イベントの経験も

授業は教員資格を持ったスタッフがマンツーマンで行い、家から出られない子どもの所へは白石さんを中心に自宅訪問を行っている。「毎日開校しているフリースクールは県内でここ『With優』だけなので、生徒は県全域から来ています」

フリースクールは、冬季を除き週末には生徒が調理や接客をするカフェレストランになる。教育相談の窓口になるとともに、生徒が人と接するトレーニングになるからだ。また、毎年実施している修学旅行の費用も、生徒が採った山菜などを支援者らに購入してもらい賄っている。

これまでフリースクールには約50名が学び、現在は小学生から20歳くらいまでの約20名が学ぶ。それぞれ復学や進学など目標を持って勉強するほか、積極的にボランティア活動や地域のイベントに参加するのも特徴だ。「生徒のなかには、何かに一生懸命取り組んだ経験の少ない子どもが多いので、人と交流したり、初めての活動に挑戦することが大きな財産になるのです」。白石さんはそう話し、子どもたちの成長に期待を込める。

フリースクールでは一人ひとりの目標や進度に合わせ、きめ細かな学習指導が行われる
協力事業所前での出店・広報活動
Page Top
Page Top