CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2014年度受賞

本間 錦一さん

これまでに育てあげた隊員は120人以上にのぼる

「心臓が動き出した時の音は、まるで神様が鐘を鳴らしたような音なんです」

1975年に、村上市の水難救助隊長に就任してから40年余り。本間さんはこれまで約50人を救助し、そのうちの4人は心肺停止状態から蘇生させている。

「絶対に助けるんだという思いで人工呼吸やマッサージを続け、口から海水が吐き出され、胸に耳をあてて心臓が動き出したときのうれしさは、もう本当に涙が出ます。まるで、神様が鐘を鳴らしたような音なんです」

そうした人命救助が若い隊員もできるよう、本間さんは4種類の泳ぎをマスターさせている。「沖で溺れる人を見つけたらまずクロールで急行し、途中から抜き手に替え、それから横泳ぎで近付き、水中に潜ったら、あおり平泳ぎで背中から抱え込んで陸地まで泳いできます。この4種類の泳ぎをマスターしなければ監視員は務まりません」

海で溺れた人だけではない。熱中症で倒れた人を助けたり、毒虫やクラゲに刺された人の治療法を医師に助言したり、トライアスロンの競技中に過呼吸症候群になった選手を助けたりと、本間さんの人助けは枚挙に暇がない。そんな人助けを、「それが私の生きがいなのです」と笑顔で話す。

「人命は地球より重い」を、若い隊員と共に実践

「海で人を助けるたび、人の命、かくも大切なものかと思います」と振り返る本間さんは、ライフセーバーについて「これほど尊い仕事はありません」と実感を込める。

そして、毎年海水浴シーズンの前には、自分に3つの試練を課してその仕事を全うしてきた。1つ目は、「自宅から海岸の監視所まで5キロの道のりを、自転車で16分以内に走れること」。2つ目は、「途中にある坂道を、自転車を立ちこぎせず、息切れしないで登れること」。3つ目が、「海岸から30メートル沖の消波ブロックまで、息継ぎなしで泳げること」というものだ。

「泳ぎでは若い人にかなわなくなってきましたが、潜るほうでは絶対に負けません」と、今年も難なく3つの試練をクリアした。

瀬波温泉海水浴場のシーズンは、毎年7月15日から8月20日までと決まっている。そして海開きの朝には本間隊長以下、隊員がそろって安全旗を掲揚したあと、全員で敬礼をしてその夏の無事故を誓う。シーズン中、本間さんは、毎朝隊員に「人命は地球より重い」と教え込み、海の安全を見守り続ける。

長年培った経験と知識を活かし、「100歳まで現役」を目指す

就任以来、1日も欠かさず付けている「監視日誌」

瀬波温泉海水浴場の監視所には、本間さん直筆の教訓、「鋭敏なる感覚」「適切な判断」「迅速な行動」の3つが掲げられている。「この三原則を確実に実行できるよう、隊員の皆に読んでもらっているんです」。こうして本間さんが育てた隊員は120人を超え、救急救命士になった教え子もいる。

なかには女性の隊員もいて、「泳がせてみたら男の隊員より泳ぎが上手なのです。これなら大丈夫だと思い隊員にしました。現在は消防署員になっています」と、うれしそうに話す。海水浴客の多い週末には、遠く千葉県や愛知県などからも教え子が応援に駆けつけてくれるそうだ。

監視員になって41年、本間さんは1日も欠かさず「監視日誌」を付け、天候から潮の流れ、水温、発生した事故まですべて記録している。どんな日に事故が起きたか、ひと目で分かる監視所の財産だ。

シーズン中は、隊員より1時間も早く監視所に来て、その日の準備を行っているという本間さん。「やはり、それが隊長の役目だと思っているのです」と話す。

監視所に掲げた本間さん直筆の教訓
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