
心の病気は、決して恥ずかしいことや特別なことではないという信念のもと、阪井さんはその理解を深めてもらうため入居支援の合間をぬって全国で講演を行っている。また、精神障害の人たちが歴史的にどんな生活をし、どういう治療を受け、社会がどう対応してきたかなどを紹介する資料館を岡山市内に今春開設した。海外にも目を向け、精神病院を廃して地域で暮らせるよう取り組んでいるイタリアの事例を紹介している。
さらに阪井さんは今、精神障害の人たちが働ける「会社」づくりに力を注いでいる。「入居者に話を聞くと、『会社』で働きたいんだと言う人が多いんですね。一般の人と同じように社会保険の健康保険証をもらうことは彼らにとって涙が出るほどうれしいことなのです。その人らしく生きるということは、その人らしく働けるようにすることだと思うのです。一人でも多くの入居者に、なんとかそれを実現・実感させてあげたい」
入居支援から自立支援へ。精神障害の人たちへの理解が深まり、自分の意思で働き暮らせる社会を目指し、阪井さんの取り組みはこれからも続く。