
「誰かが俺を殺そうとしている !」。阪井さんのもとに入居者の男性から連絡が入ったのは19年前のこと。すぐに駆けつけると男性は錯乱状態で、妄想に苦しんでいた。しかし、家族に電話しても「関わりたくない」と取り合わない。病院を探してたどり着いたのが精神科だった。
医師の診断は「統合失調症」。離婚をきっかけに、心の病気になっていたのだ。
このことをきっかけに病院へ通うことになった阪井さんは、数カ月後、その病院から「退院後の入居先で困っている患者がたくさんいる」と相談を持ちかけられる。詳しく話を聞いてみると、家族に見放され部屋が確保できないため50年も入院している患者がいるという。たとえ部屋が見つかっても、台所や風呂が壊れていたり、トイレを修繕されなかったり、畳や壁がボロボロでも「貸してやっている」という態度で、家賃に上乗せして貸し出す大家…。こうした実態を知った阪井さんは強い憤りを覚え、支援に乗り出したのである。