
野球部での活躍が新聞報道されたこともあり、その夏、チエさんは日本女子プロ野球機構の依頼を受け、女子プロ野球リーグの大会で始球式をすることになった。
自前でボールを用意し、チームメートの指導を受けながら投球練習を重ねるチエさん。始球式の当日、中島先生から贈られた背番号83(年齢と同じ番号)のユニホームでマウンドに向かうチエさんの背中には、チームメートや同級生、先生たちから惜しみない声援が送られた。振り向くと、皆が掲げる大きな横断幕が目に飛び込み胸が熱くなった。そこには力強い文字で「チエさん 夢と希望と元気をありがとう!」と書かれていた。
2014年3月1日、4年間通った高津高校定時制卒業の日、すっかり手になじんだチエさんの赤いグラブには、仲間からのお礼のメッセージがたくさん書き込まれた。卒業生の輪のなかには、「結婚式に呼びます」という女生徒の言葉に、「きっと行くね」と笑うチエさんの姿があった。
チエさんの、変わることのない人生の目標は「生涯現役」。卒業後も書道、水墨画、絵手紙、水泳と新たなチャレンジの日々が始まっている。