
吉村さんは2011年、「ハーティーラダー」に、病気の進行で声を失う難病患者のため「マイボイス」という機能を加えた。自分の声を登録しておけば、入力した文章がその声で読み上げられるというもので、東京都立神経病院の作業療法士・本間武蔵さんの依頼を受け、5年がかりで作り上げた。
市販のソフトが百万円程度と高額で声の登録に半日かかるのに比べ、「マイボイス」は五十音順や濁音など126音素だけで、15分程の録音で済むので、病気が進行した患者への負荷も少ない。しかも、無償で提供しており、これまで100人以上が声の登録をしている。残した自分の声で会話できるということは、意思だけでなく心も伝えられると、多くの患者さんや家族の生きる支えとなっている。「より人間らしい自然な話し方になるよう、今でも試行錯誤しています」と、吉村さんは日々改良を続けている。
「息子の優輝も、少しずつこのソフトの持つ意味が分かってきているようです」と、優しい父親の表情を見せる吉村さん。障害があっても自分の思いを伝え、心が通じ合ってほしいと、必要とする人がいる限り新しいアイデアに挑み続ける。